学習指導要領では、事象を数理的に考察し表現する能力を高めること、数学的活動の楽しさや数学のよさを実感すること、活用して考えたり判断したりしようとする態度を育てることなどが、特に強調されています。それを受けて、本部会では、まず「グラフを正しく理解する力の育成」、「思考力・判断力・表現力を高める授業の実践」の発表が行われました。次に、これらの発表をもとに小グループをつくり、研究協議を行いました。まとめとして、県教委事務局学校教育課の松本秀則指導主事に指導助言をいただきました。
発表1 グラフを正しく理解する力の育成
-情報発信者の意図を見抜く力の育成を目指して-
対象となる資料を統計的な手法を用いて処理し、生徒自身がその傾向を捉えて分析するという一般的な活動に加え、異なる分析結果に対して理解を示したり、問題点を指摘したりして反論する力を身に付けるための授業展開の提案がありました。具体的には、新聞記事に見られる表やグラフ、数値などを説明に照らし合わせ、データが正しく用いられているか、使用されたデータに対する分析は適切かなどについて、レポート作成を通して考えさせる実践例の報告がありました。
発表2 思考力・判断力・表現力を高める授業の実践
-自らの思考を客観視、再構築するために-
思考過程の言語化及び再構築を通して、より高度な思考力を効果的に育成するため、「考えること」を客観視し論理的に捉えるとともに、考えるための技法である「思考のすべ」を用いた授業展開の提案がありました。ベクトル方程式を利用して点の存在範囲を求める問題の解法において、比較、分類、関係付け、理由付けといった「思考のすべ」を用いて思考過程を視覚化し、論理的に説明できるようにする実践例の報告がありました。
研究協議
発表1、2の内容を踏まえ、自らの実践を振り返り、気付いたことや自分で実践してみたいことなどについて活発な議論がなされました。協議の中で、「情報の信用性を見極める判断力を数学の学習において身に付けさせたい」、「数学のよさを実感させたい」、「思考のすべは数学が苦手な生徒にも有効な手立てである」、「生徒に考えさせる際には適切な発問が必要である」などの意見がありました。
指導助言
松本秀則指導主事からは、発表1、2の講評のほかに、それらの発表を踏まえた数学教育に関する助言をいただきました。なぜ「思考のすべ」が有効なのかに対しては、生徒の思考の過程にことばを与えることにより、主体的に考える環境を整えたこと、さらに、ことばを大切にするには言語活動の充実が必要であることなどの説明がありました。また、資料の傾向を的確に捉えたり、数学的な表現を用いたりして理由を説明することの重要性について説明がありました。統計に関するWebサイトや統計グラフコンクールにおいて栃木県の高校生が全国特選を受賞したことの紹介もありました。