平成29年3月に公示された学習指導要領では、育成を目指す資質・能力が三つの柱で整理されまし
た。「これからの時代に必要となる資質・能力の育成」には、「主体的・対話的で深い学び」を実現していく必要があります。本部会では、「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指した中学校と高等学校の実践についての発表が行われました。続いて研究協議を行い、「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指した授業改善について話し合いました。
【発表1】
説明的文章を学習者主体で読む指導の工夫
-クリティカルな「読み」と「思考」の研究を通して-
「教科書の文章=真」ではなく「教科書の文章=真?」と捉え、学習者が主体的・能動的に文章を読むには「疑問」をもつことがスタートであるとし、発問を工夫した中学校の実践事例が紹介されました。綿密な研究に基づき、各学年における教材の捉え直しの視点などが示されました。授業の映像では、子どもたちが様々な角度から考えを深めようとする姿が見られました。
【発表2】
「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善
-「読むこと」「書くこと」「話すこと・聞くこと」の授業実践-
【発表2-1】
複数の文章を比較しながら読むことを通して、思考を深める
文法事項等の知識の定着と詳細な現代語訳を作ることが学習の中心となりがちであった古典の授業を見直す取組が紹介さました。自主学習のワークシートをもとに協働的な活動を通して知識を確認した上で、複数の古典の比較から、自らの読みを深める活動が示されました。生徒は『土佐日記』「門出」と『御堂関白記』を比較し、『土佐日記』が女性に仮託して書かれた意味について、KJ法を通して考えを深めている生徒の様子が紹介されました。
【発表2-2】
書くことの充実を図る授業例
-「自己との対話」に向けて-
子どもたちのコミュニケーション能力の育成を目指して、自分の感情を言葉で表現する取組や語彙力向上の取組が紹介されました。「色の名前」の創作と説明、短歌の創作を経て、単元のまとめとして、生徒たちは過去の体験を振り返り、そのときの感情に向き合いました。発表から、自らの感情に向き合うことで、成長していく生徒たちの姿がうかがえました。
【発表2-3】
主体的な対話活動の実践
-効果的な説明から質問へ-
生徒の興味・関心が高い話題を中心に取り上げた、「話す・聞く能力」を育む実践事例が紹介されました。部活動の連絡やオリンピック・パラリンピックの競技の説明をする際、どのような順序で、どのような言葉を使って説明するとより相手に伝わりやすくなるのかについて生徒たちが活発に話し合う様子が紹介されました。また「聴写」の活動を毎時間取り入れた試みも示されました。
【研究協議】
「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指して、各自の取組や課題、悩み等を協議しました。「活動慣れが懸念されること」、「進学との兼ね合い」、「評価の仕方」、また「生徒の内面にどこまで踏み込めるか」といった話題が各班から挙げられました。「目的の明確化」や「魅力的な課題の設定」、「いかに生徒の進路や実生活につなげるか」といった基本的な授業技術や生徒の実態を踏まえた活動、学習内容を計画していく重要さを確認し合いました。