平成18年度 情報モラル研修 事後アンケートのまとめ

アンケートのねらい :  情報モラル研修は、受講者が情報モラル教育に対する理解を深め、それをもとに情報モラルの指導を教育活動の中で実践し、正しい判断・行動のできる生徒を育成することをねらいとして行った。
この事後アンケートは、受講者が2日間の研修で得た知識や実践力を教育現場でどのように生かしているのかを知ることにより、研修の有効性を探ると共に、今後の研修カリキュラムの改善、充実を図ることを目的として行った。
対象 :  平成18年度情報モラル研修受講者 146名(県内公立中学校146校から各校1名受講)
実施時期 :  研修を6月と9月に実施し、事後アンケートを1月から2月中旬に行った。
実施方法 :  事後アンケートの実施について各中学校長あてに通知し、Web上で受講者による記名アンケートを行った。
回収率 :  回答者数 103/146  回収率70.5%

 集計結果

1 今年度研修した内容を同僚に伝達しましたか。



2 今年度、情報モラルの指導について職員研修を行いましたか。



3 研修終了後、情報モラルに関する指導を行いましたか。



4−1 誰を対象に指導しましたか。あてはまるものを全て選んでください。



4−2 指導は何の時間に行いましたか。あてはまるものを全て選んでください。


@指導にあてた時間
A指導した教科

4−3 どんな内容について指導しましたか。あてはまるものを全て選んでください。

 考察

 情報モラル指導について、校内での職員研修を行った学校は36%と少ないが、本研修の受講後に、研修内容を同僚に伝達している学校が90%であった。この結果から、情報モラル教育に関する校内研修の十分な時間がとれなかった学校でも、本研修内容の伝達は行われていることがわかる。
 また、本研修受講後、89%の学校が生徒や保護者に対する指導を行っている。本研修を契機に、実際の指導につなげているといえる。さらに、生徒指導上の問題として掲示板やメール、チャットなどでのトラブルが増えており、指導せざるを得ない状況になってきていることも、指導した割合が高くなった要因の一つと考えられる。
 指導にあてる時間は、朝・帰りの会が一番多い。全校生に一斉に指導するために、集会や短学活の時間を活用していることがわかる。指導した教科では、学習指導要領に情報モラルの指導が位置づけられている「技術・家庭」が一番多いが、中には理科や社会の時間にも指導している学校もある。このように、「技術・家庭」の時間に指導するだけではなく、他教科でも、コンピュータを使う場面などでその都度指導していくことが大切である。
 指導内容については、掲示板の利用、チェーンメール、著作権、個人情報管理の4つを指導している学校が多い。これは、先に挙げた、生徒指導上喫緊の課題となっている内容を優先して指導しているといえる。


4−4 情報モラルを指導することによる生徒の変化(自由記述)

<主な記述内容>
実際に作業をする際、著作権について意識するようになり、生徒同士の会話の中にも聞くようになった。
インターネットやメールでのトラブルや、個人情報管理、マナーなどの大切さについての理解が深まり、知識を得ることで、注意して利用できるようになった。
電子メールや掲示板などの顔が見えないコミュニケーションで問題を起こさないように気をつけるようになり、相手に読まれることを意識した文章が書けるようになった。
掲示板への不適切な書き込み等が減った。
誹謗中傷時の対応方法を指導したことにより、個人で管理者、プロバイダーへの対応ができる生徒が増えた。実際に、携帯電話掲示板サイトが閉鎖された。
地域特有の不適切な掲示板への書き込みが激減した。
安易にブログなどを利用する生徒が多くなってきているが、書き込んだ内容を不特定多数の人が見ることの危険性を認識したようである。
WEB上で、インターネットの様々なトラブルの事例や対策を学ぶことにより、どの教科の授業においても安心してインターネットを利用できるようになり、情報活用の能力が向上した。
個人情報をむやみに公表しないよう注意するようになった。メールの文の内容をよく考えて書くようになった。

 考察

 最も多かったのが、「それまで意識していなかったモラルやマナーに気を配るようになった」という回答である。携帯電話やPCは、基本的なルールやマナーを身に付ける前の生徒たちの生活中に、当たり前のように入り込んでいる。そのような生徒たちに、改めてルールやマナー、危険性などを指導することが重要なことである。
 中には、「生徒が学校でそのような場面に接することはないので、指導の必要を感じない」という回答もあった。しかし、生徒が正しい自己判断を迫られる場面は、学校以外の場所の方が多いはずである。学校以外の場でも正しく判断し、行動できる生徒を育成するためには、学校での活用の有無にかかわらず指導する必要がある。


4−5 情報モラルの指導で難しかったのはどんな点ですか。

<主な記述内容>
具体例を示しながら話を進めないと、普段インターネットの利用が少ない生徒には、分かりにくい。
家庭によって、ネットの接続状況や携帯の所持について差があるので、用語の理解の程度などに差があるように思う。
唐突に始めることによって不自然な導入になってしまった。普段から何らかの形で、情報モラルの指導を行っていれば、スムーズに指導が行えたと思う。
携帯サイトの利用に関して生徒の知識や情報の方が断然先に進んでいること。
情報モラルといっても範囲がひろいことと、最後は個人の倫理観やモラル全体に関わることであるということを理解させることであった。特に、後半については、「○○すると犯罪になります」「○○するとそれは、自分だとわかってしまいます」などという話ばかりに終始しないで、個人のモラルを向上こそが、正しい判断につながるということを理解させるのに苦労した。
自分自身が、あまりコンピュータを使わないので、基礎知識が少ない。そのために初歩的なことしか教えられない点。
自分が体験していない内容で、さらに生徒に伝えにくい内容等についての指導がしにくい。

 考察

 「生徒の経験差、意識差が大きい」という回答が最も番多かった。頻繁にパソコンや携帯電話を利用している生徒と、全く触れたことのない生徒を同時に教えることに難しさがあるといえる。今後、指導方法の工夫・研究が必要である。


 まとめ

 情報モラルの指導について教職員の共通理解をより深めるためには、校内研修に位置付けることや、各教科や道徳、特別活動、総合的な学習の時間等の年間指導計画の中に指導する時間を明記するなどして、指導計画の中に位置付けることが必要である。
 情報モラルに関する指導において、違法行為、安全性の確保等については、指導すべき内容が明確である。しかし、倫理面に関する指導は、人権感覚を磨くこと、日常のモラルを向上させることとも深く関連しているので、情報モラルの指導を特別なことととらえず、これまで行ってきた「心を育てる指導」と関連させながら指導していくことが重要である。

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