平成19年度 情報モラル研修 事後アンケートのまとめ

アンケートのねらい :   情報モラル研修は、受講者が情報モラル教育に対する理解を深め、それをもとに情報モラルの指導を教育活動の中で実践し、正しい判断・行動のできる児童を育成することをねらいとして行った。
 この事後アンケートは、受講者が2日間の研修で得た知識や実践力を教育現場でどのように生かしているのかを知ることにより、研修の有効性を探ると共に、今後の研修カリキュラムの改善、充実を図ることを目的として行った。
対象 :  平成19度情報モラル研修受講者 345名(宇都宮市を除く県内公立小学校345校から各校1名受講)
実施時期 :  研修を6月と10月に行い、事後アンケートを2月に実施した。
実施方法 :  事後アンケートの実施について各小学校長あてに通知し、Web上で受講者による記名アンケートを行った。
回収率 :  回答者数 308/345  回収率89.3%

 集計結果

1 今年度研修した内容を同僚に伝達しましたか。



2 貴校では、今年度、情報モラルの指導について職員研修を行いましたか。



3 貴校では、10月の研修第2日以降も情報モラルに関する指導を行いましたか。



4 情報モラル研修を受講後、あなた自身の情報モラル教育に対する意識が変わりましたか。



5 あなたは、情報モラル研修を受講したことで、学校全体にどんな影響を与えられたと思いますか。

<主な記述内容>
全校体制で情報モラル指導に取り組むことができた。
児童の実態やネット上でおきている諸問題について理解してもらい、情報モラルの指導が急務であること、小学校でのモラルの指導が大変重要であることを理解してもらえた。
小学校の児童にも関わる問題として、本校の教職員だけでなく、保護者にも重要な問題として、知らせることができた。
現職教育で研修内容の伝達を行ったことで、教職員の情報教育に対する意識の高揚を図れた。
「総合的な学習の時間」の年間指導計画(5・6年)に、情報モラルの時間を位置付け、児童を指導することができた。
地域の医療関係者や保護者も関わる学校保健委員会の企画会議において,情報モラル教育の重要性を訴え,それに関する話し合いの時間を確保することができた。警察職員にも来てもらい,ネットによる被害の危険性を,保護者に広めることができた。
保護者会でネット犯罪について講話を行ったので、安全面を重視して携帯電話等を使わせていた保護者も含め、学校全体として、危険性を十分に認識させてからでないと容易には情報機器を与えられないということが認識できた。






 <考察>

 研修内容を伝達することで、受講者以外の教職員がネット上で実際に起きている諸問題を理解し、情報モラル教育の重要性や必要性を認識したことがわかる。また、保護者の啓発を行ったり、年間指導計画への位置づけを図ったりした学校もある。

6−1 誰を対象に指導しましたか。あてはまるものを全て選んでください。


                 その他:職員(15)、保護者(2)、地域の方(1)

6−2 指導は何の時間に行いましたか。あてはまるものを全て選んでください。



                 その他:職員研修(8)、クラブ活動(5)、家庭訪問・懇談(5)
                 委員会活動、休み時間・放課後、保護者啓発プリント配布、他

6−3 どんな内容について指導しましたか。あてはまるものを全て選んでください。

 考察

 研修内容を同僚に伝達した受講者は94%、職員研修の中で取り上げた学校は58%あった。この割合は中学校(昨年度:伝達90%、研修36%)より高い。半数以上の学校で、情報モラル教育に関する情報の共有化が図られていることがわかる。
 今年度の研修では、第1日の研修内容をもとに指導を行い、第2日に実践事例を発表した。そのため、6月から10月の間に各学校で必ず1回以上の指導が行われている。さらに、研修終了後にも指導を行った学校は84%あり、研修が指導に生かされているといえる。
 また、95%の受講者が、本研修を受講して「情報モラル教育に対する意識が変わった」と答えていることから、小学校教諭の意識の高揚にも効果があったといえる。具体的には「小学生段階からの情報モラル教育の重要性を感じた」「情報モラル教育の必要性を強く感じた」「携帯電話を持つ前の指導が必要だ」「パソコンを用いないと指導できないと思っていたが、プリントを使ったり、日常生活の会話の中でも指導していけることがわかった」等の回答が多く見られた。
 さらに、指導の対象者としては、高学年を対象に指導した学校が多かった。これは、今年度の受講者が「5・6年生担当者」であったため当然の結果といえるが、なかには小学校低学年、中学年、教職員、保護者、地域の方々まで広く指導している学校もある。今年度の受講者が、来年度違う学年を担当することにより、他学年での指導実践がさらに広がることが期待される。
 指導に充てた時間は「学級活動」「総合的な学習の時間」が最も多かった。昨年度の中学校のアンケートでは「朝・帰りの会」での指導が多かったことと比較すると、小学校の方が授業の中で指導していることが多いことがわかる。
 指導内容については、「チェーンメールへの対応」「個人情報の管理」「掲示板利用」「著作権」の指導が多く行われている。この内容は、携帯電話の所持率が高くなっていること、それに伴うトラブルの増加、事件や事故防止のための指導という観点から優先的に行われているものと考えられる。



6−4 情報モラルを指導することによる児童の変化(自由記述)

<主な記述内容>
個人情報に対して意識するようになってきた。ホームページを見るときにも,「これは気を付けなければいけない」という会話も聞かれるようになった。
調べたことをまとめる際、出典を明記するようになった。
著作権については、日常生活の中で「これはまずいよね。」という発言が出るようになった。
携帯電話やメールを使う時の便利さや怖さ、守るべきマナーを改めて知り、気をつけていこうとする気持ちを持つことができた。
携帯電話はマナーを守って使いたいという意識を持つようになった。
各自のパスワードの管理に気を付けるようになった。また,インターネット利用時,見慣れないページやメッセージが出てくると,すぐに教師に相談するようになった。
携帯電話やパソコンは大変便利な道具であるが、使い方を間違えるととても恐ろしいものであるということを自覚しつつある。
パソコンを使っての検索やネット上のゲーム,買い物に興味を持っている児童が,保護者に相談しながらネット上での操作をしようとする認識が高まった。また,困った時には教職員や保護者に相談する必要性を実感したようだ。
インターネット画面上によく出てくるプレゼントやアンケートなどのサイトに、以前よりも警戒心を持つようになり、気軽にアクセスしないようになった。
児童に「相手に対して嫌な行為は、ネット上でもやってはいけない」という意識が生まれた。
チェーンメールが来たときには、勇気を持って自分で止めようという気持ちを持つことができるようになった。
便利な道具、というだけでなく、約束・マナーを持って使うものだとの認識を持つようになった。
「総合」などでパソコンを使用する際に、情報モラルについて互いに話したり注意し合ったりする姿が見られた。
ネットの世界も人がいて一般的なエチケットやモラルが必要で、自分も公の人であるという自覚が持てるようになった。

 考察

 情報モラルの指導を受けた児童は、「便利な道具」の裏側には危険も隠れていること、注意して使う必要があることなどを理解し、実際の活用場面でその知識を生かそうとしている。
 また、ネット上の見えない相手に対するエチケットやモラルを意識するようになっている。


6−5 情報モラルの指導で難しかったのはどんな点ですか。

<主な記述内容>
教職員、保護者の知識不足。
情報機器の使用状況・理解度に個人差が大きいこと。
学校外でのことまで学校で指導すること。
情報モラルを指導するタイミング。(何をどこで扱うか)
今年度は時間をとっていなかったので、時間を生み出すことが大変だった。
必要性は感じるが、どの時間に指導したらよいのかという点。年間指導計画などにも組み込まれていないので、早急に対応が必要。
学校のネット環境の不備。
保護者が,安易に携帯電話を買い与えていること。

 考察

 指導で難しかった点として、「指導する側の知識不足」「指導時間の確保」「児童の情報機器利用経験の差」の3点が最も多く上げられた。
 一点目については、校内研修等を通して全職員が情報モラル教育についての知識を深め、学校全体で「いつでも、だれでも、何度でも」指導できる体制を作ることが求められている。
 二点目については、多くの受講者の回答にも書かれていたとおり、各学年、各教科、各領域の年間指導計画の中に情報モラルに関する指導時間を位置付け、計画的、系統的に指導を行っていくことが重要である。
 三点目については、利用経験の少ない児童でも具体的な事象を理解できるように、シミュレーションソフトや疑似体験ソフトの活用を進めるなどの工夫が大切である。


 まとめ

 本研修を通して、受講者の情報モラル教育に関する知識を増やし、意識を高めることができた。また、指導を受けた児童にも変化がみられたことから、「正しい判断・行動のできる児童を育成する」というねらいに向けて各校で多くの実践が行われ、効果を上げているといえる。
 「コンピュータを使わなくても情報モラルの指導はできる」ということは、多くの指導実践の中からも明らかであり、工夫次第で日常のモラルと密接に関係させながら指導していくことが可能であろう。
 今後は、各市町教育委員会や情報教育担当者と連携を図りながら、課題としてあげられた「教職員の知識不足」「指導時間の確保」「年間指導計画への位置付け」「児童の知識や経験差への対応」などの解消に向け、実践を重ねていくことが大切である。

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