山本有三
山本有三はどのような少年時代を送っていたか

郷土(きょうど)が生んだ有名な作家、山本有三は、明治(めいじ)20年(1887年)7月27日、現在の栃木市(とちぎし)で生まれました。
父は元吉(もときち)といい、元宇都宮藩(うつのみやはん)の武士でしたが、明治になると武士をやめ、呉服屋を営んでいました。
有三は、小さい頃から体が弱かったのですが、一生懸命勉強して立派な成績で高等小学校を卒業しました。

勉強することが大好きだった有三は、その後もっと勉強するために、中学校へ進みたいと思っていました。
しかし、父は有三を商人にさせたかったため、東京の呉服屋さんに奉公させました。
1年間、我慢して働いたもののどうしても学校に行きたくてたまらなくなり、そこを逃げ出して家に帰ってきてしまいました。

それからは家の仕事を手伝っていましたが、18歳のとき、ようやく母の協力で学校に入ることを許されました。
喜びいっぱいで東京に向かった有三は、夢中で勉強し中学校に入ることができました。

卒業するとすぐ、岡山県の第6高等学校の入学試験に合格しました。
合格の知らせは、学問をすることに反対していた父を、初めて喜ばせました。
しかし、その後すぐに父が亡くなり、有三は一人残った母のために、せっかく受かった入学を取り消し、故郷にもどり、家の仕事を継ぎました。
母は有三の望みがよくわかっていたので、もう1度、受験することを勧めました。そして、有三は明治40年(1907年)、第一高等学校に合格しました。