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令和6年度第1学期始業式式辞

皆さん、おはようございます。
ただ今は、昨年度まで2・3年次生をご指導くださった先生方をお送りしました。寂しさを感じている人が多いと思いますが、先週の金曜日、5日には240名の新入生が入学し、全校生徒701名で「さくら清修高校」の新年度が始まりました。賑わいを取り戻し、また春の陽気も相まって、活力や希望が湧いてくるように感じているのは私だけではないはずです。

入学式で布の染色技法の1つ、「桜染め」について式辞で述べました。新入生には記憶に新しく重複した内容になるので、入学者選抜を見事突破し合格発表で自分の受検番号が掲げられた時の歓びや、緊張しながらも高校生としての第一歩を踏み出した入学式、或いは級友との最初の出会いの光景などを思い出しながら聞いてください。2・3年次生にとっては初めての内容なので、よく聴いて参考にしてほしいと思います。

「桜染め」とは、文字どおり布を桜色に染めるものですが、用いられる桜の原料はピンクの花びらではなく、意外にもごつごつとした木の皮なのだそうです。しかも桜が開花する直前の時期、3月頃に採取したものでなければなりません。あの桜の皮を使って桜色に布が染まっていく様を皆さんは想像できますか?桜はきれいな花を咲かせるために、根や幹、枝葉の全体を使って樹液を花弁に送るのだそうです。つまり桜の花の色も桜染めの布の色も当たり前ですが、元は桜の樹液の色なんですね。私たちが自然界で目にする桜の花は、満開になって咲き誇ったかと思うとあっという間に散ってしまいますが、そのわずかの期間だけ適切な時期に花開くために、木全体が見えないところで準備・活動しているんです。

もう皆さんには、なぜ私がこの話をしたのか、意図は掴めましたね。桜は自然環境、気温、土壌などに左右され、若干、開花の時期や色合い、散るまでの日数が異なっても、1年に1度、春先には確実に私たちの目を楽しませてくれます。新入生には期待を込め、桜に例えて「3年後にどんな花を咲かせるか楽しみにしている」と言いました。2・3年次生は、それぞれ2年後、1年後に最大の結果を披露してくれるものと信じています。

私は生物に関する詳しい知識を持ち合わせていませんので、事実を正しく伝えられているか心配もありますが、植物は保持するゲノム、遺伝子情報に基づき個体を維持しており、その成長過程の1サイクルとして桜は、毎年春先に体全体で樹液を送り色鮮やかに花を咲かせるわけです。60兆以上もの細胞からなる私たち人間の体は、もとは1個の細胞からできたものであったり、環境に適応して種を保存してきた点では植物と共通しているかも知れませんが、自らの手で環境を変えることが可能であるし、大地に根を張って移動できない訳ではありませんから、進化の度合いが植物より格段に大きい訳です。何より、人それぞれ意志や目標、思考や行動が異なるため、個体差と言ってよいかは分かりませんが、個性や適性、到達度が大きく違ってくるのだと思います。皆さんは、どのような花を高校生活の集大成として咲かせますか?そのために、どの時期にどう時間と知恵を使いますか?人間は、自ら適切な肥料や水分(知識や経験のことですが)を吸収することができます。時期や量を誤らないよう、正しく見極めてください。もし迷った時には、いつでも先生方に相談してください。一人一人が素晴らしい花を咲かせるよう、応援します。

話は変わりますが、脳科学者で医学博士の中野信子先生を知っている人はいますか?先生は、東京大学大学院の医学系研究科脳神経医学専攻博士課程を修了され、現在、東日本国際大学教授、東京都港区の森美術館の理事などをお務めでいらっしゃいます。

視覚や聴覚の認知、記憶・学習・予測・言語などの高次認知、喜怒哀楽や理性などの情動に関する脳機能について研究するのが脳科学の研究分野であり、私たち人間がよりよい社会生活を送るよう、研究成果が生かされているそうです。

さて、中野先生は、過日、下野新聞社の会員制組織「しもつけ21フォーラム」の講演会で、人間の体は他の動物と比べて非常に弱く、種として生き延びるために社会的集団をつくってきたとし、「人間は集団を守るためにルールを破りそうな異質な人を排除する、社会という罠の中に生きている」と述べられたと報じられていました。桜はその受け継いだDNAにより1年に1度、きれいな花を咲かせ、我々人間は生きるために集団を形成し、規則を設け異端者を除外するんですね。さらに先生は、「目立つ人や得をしていそうな人が標的になりやすいため、圧倒的な存在になって『あの人には敵わない』と思わせることも重要だ」とも述べられたそうです。経済人に向けた講演だけあって、中々に切り口が鋭いですね。

これは、「出る杭は打たれる」しかし、「出過ぎた杭は打たれない」と言い換えることができるでしょうか。人間の性とも言える、元来、弱い生き物だからこそ群れを成して生きながらえる。その群れ、つまり集団を守るのがルールです。これを今現在の皆さんの状況、高校生活に当てはめれば、学級や授業、部活などそれぞれの部署に所属して、各集団の決まりに従いながら知識や技術、社会性などを身に付け、将来、社会で通用するよう仲間や先生方の協力や指導によって成長していくために、校則があるのだと言えます。不条理・不合理な校則、特に時代にそぐわないものは、どの学校でも改善する方向で検討していると思いますが、本校でも制服やスマートフォンの持ち込みなどについて、一部、改定したところです。校則や社会の規則は、皆さんを不当に拘束するためのものではなく、私たちが安全でより良く生きるためにあるのですから、まず皆さんには「正しく生きること」を強くお願いします。「正しく生きる」とは、堂々と生活することですから、植物と同じで、すくすくと成長することになりますし、そのような人には応援してくれる人が集うものです。

皆さんはこれからも成長し続けます。最もその度合いが高いのが高校時代です。どの分野でどんな才能を花開かせていくのか分かりませんが、無限にある可能性に限界を決めるのは他ならぬ自分自身ですから、悔いが残らないよう、何事にも全力で取り組んでみてください。本校は、学びの形態も個性的、部活動やボランティア活動も多種多様、生徒会活動も活発ですし、読書に励もうとすれば3年間では読み切れない蔵書が図書室にあるなど、教育システムや資源に大変恵まれています。「正しく生きること」の次に、「有効に時間とものを活用すること」をお願いします。ひたむきに努力する姿に異端も何もありませんから、「常識的な範囲で大いに出過ぎて」社会で打たれない力と個性を、これでもかと伸ばしてください。資格取得なら誰にも負けないとか、ボランティア精神に溢れているのが自慢だとか、自信が持てるものに手間暇をかけてください。

新たな年度を迎え程度の差こそあれ、どの生徒も期待と不安が入り交じっているものです。徐々に新たな環境に慣れていくとは思いますが、ここさくら清修高校には、皆さんの悩みや疑問に真摯に対応してくれる先生方やスクールカウンセラーもいらっしゃいますので、
時に信頼できる大人への相談も行いながら、各自の夢の実現に向けて邁進してください。4月1日の職員会議で先生方に、「授業研究」による確かな学力の養成と「生徒一人一人に寄り添った指導」による生活支援の充実の2つを特にお願いしてあります。今年度は、始業時間が5分早まった他、朝の読書や土曜課外など、昨年度とは大きく異なる点がいくつかあります。進路実現等の目標達成のために、1時間1時間の授業に真剣に臨んでください。学習内容を理解し学力が定着するよう、予習・復習を習慣化しましょう。勉強だけでなく、友人との関わり方、高校生としての在り方や人としての生き方など、迷った時には先生方に相談してみてください。さくら清修高校には、皆さんの将来の財産となるような知恵が無尽蔵に備わっていますから、活用しましょう。

最後に、皆さんとさくら清修高校がより素晴らしいものになるよう、3つのことをお願いします。これまで話したことのまとめにもなります。1つ目は、「制服を正しく着用する」こと。2つ目は、「校歌を大きな声で歌う」こと。3つ目は、「気持ちよい挨拶をする」ことです。これらは基本的なものばかりで多くの生徒ができていることですが、皆さんを守るためであり、皆さんが社会を生き抜くために必要な基礎となるものです。併せて、呼名されたら「大きな声で返事をする」ことも2・3年次生は、必要な理由を分かっていると思います。こんな簡単なことで良いのかと思ったでしょうが、これらのことが皆さんと本校の品位、名声を高めてくれます。簡単だから難しいというものも世の中にはありますが、良い生徒・学校の基本ですので、お願いします。

以上で式辞とします。