小高生へ(18)

「夢を叶えたKさん」第2回

 「校長室より」のページから、生徒の皆さんへメッセージを送っていきたいと思っています。感想や要望がありましたら、気軽に声をかけてください。

 Kさんについての続きです(事前に本人の許可を得ております)。

 Kさんの面接練習の時に、私は障がいについての2つの質問をKさんに投げかけました。
 ひとつは、「あなたは自分の障がいとどのように向き合ってきましたか?」、もうひとつは、「もし働くことになったら、どんなことに配慮してほしいですか?」という質問です。
 最初の質問に対してのKさんの答えは、前回記しました。

 次の質問に対して、Kさんは即座にこう答えました。「どうか、他の方たちと同じように働かせてください。障がいを『盾』にしてはいけないと考えています。他の方々と同じように働きたいです。」この答えを聞いて、私ははっと胸をつかれ、しばらく言葉が出ませんでした。もし私がKさんで、この質問をされたら、きっと職場に対して何かしらの配慮を求めただろうと思います。もしかしたら、それ以上に、障がい者である自分を苦しめている世の中への不満を強く訴えたかもしれません。しかし、Kさんは何の配慮も求めず、特別扱いせずに働かせてほしいと、きっぱり答えたのです。Kさんの純粋で、精神的な美しさに、私は心打たれました。

 Kさんは就職試験の二次に合格しました。大学に進学するよりも、Kさんの障がいを理解したうえで採用したいという職場に就職した方が、Kさんの将来のためにはいいかもしれないと私は思いました(その職場からは、Kさんにぜひ就職してほしいという電話までありました)。大学に進学しても、Kさんの夢である中学校の英語教師になれるという保証はありません。また、教師以外の職業に就職できるかどうかもわからないのです。Kさんの進路指導をする他の先生たちも同じように考えて、Kさんにもそのことを伝えたようです。しかし、大学に進学し、中学校の英語の先生になるという夢を諦められないKさんは、就職はせず、大学入試を受けることを決めました。

 Kさんは、希望する大学に見事合格することができました。特別支援学校を卒業したKさんは、大学に入学しました。そして、中学校の英語の先生になるために学びながら、サークル活動等にも取り組んでいました。(Kさんが所属する音楽サークルの発表会を、一度見に行ったことがあります。他の大学生とともに活き活きと演奏するKさんの様子から、大学生活を楽しんでいる様子が想像され、嬉しく思いました。)
 Kさんが大学に入って1年後に、私は高校に異動となりました。その高校には教頭として3年間勤務しましたが、その3年間はまさしくコロナ禍の3年間でした。Kさんの大学生活も2年生以降はコロナ禍にあったということになります。時々、Kさんはどんな大学生活を送っているだろうと思うことがありました。また、地域の中学校に訪問することがある時などは、階段の多い中学校の建物を見ると、Kさんの夢は叶うだろうかという気持ちを抱かずにはいられませんでした(Kさんは足の障がいのために、階段を利用することは難しいのです)。

 Kさんが大学4年生だった年の秋、Kさんの通っていた特別支援学校から、私にひとつの連絡がありました。

 その連絡は・・・、次回に記します。