小高生へ(8)

「人生の宿題」

 ~自分で考える大切さ

 「校長室より」のページから、生徒の皆さんへメッセージを送っていきたいと思っています。感想や要望がありましたら、気軽に声をかけてください。

 夏休みの宿題になかなか手をつけられず、夏休みが終わりに近づいてから宿題を終わらせるのに大変な思いをした・・・などということは、皆さんはきっとないですね(?)。私は小学校の時は、毎年夏休みの最後の数日は必死でした。
 学校の勉強に宿題があるように、私たちの人生にも「宿題」があると感じています。宿題といっても問題集に取り組んだりするわけではなく、人によってそれぞれ様々な宿題です。私たちの人生には「ステージ」というものもあります。皆さんは今、「高校生」のステージにあって、もう少し細かく見れば、「高1」・「高2」・「高3」のステージに分けることができます。そして、それぞれのステージで、各人がそれぞれの「人生の宿題」を抱えていると思います。
 高校生のステージにある人は、高校卒業後に何を目指すかを決めて、その目標に向けて努力するという「宿題」があります。社会人のステージになったら、仕事を覚えたり、社会人としての行動や言葉遣いを身につけたりする「宿題」があるでしょうし、年齢的に見ても10代、20代、30代、40代、50代、60代・・・と、それぞれ年齢に応じた「宿題」があるように思います。また、人の人生は様々ですから、ほかの人とは違う、その人だけの「人生の宿題」というべきものもあります。ヘレン・ケラーのような人は、本当に大変な「人生の宿題」に取り組み続けたと言えます。「宿題」はない方が楽かもしれませんが、「人生の宿題」が何もないという人はいないはずです。私たちは誰もが、何らかの悩みや課題を抱えています。その悩みや課題にどう向き合うかが、「人生の宿題」なのです。
 「人生の宿題」に対する答えは、模範解答のようなものがあって、それだけが正解というわけではありません。絶対的な正解があるのではなくて、人生の様々な場面における「自分にとっての正解」を、手探りでその都度見つけていくものだと思います。『男はつらいよ』という映画シリーズを知っていますか? 映画の中で、主人公の寅(とら)さんに、甥の満男(みつお)が「何のために大学に行くのか?」と問いかける場面があります。満男は受験勉強が辛くなっている時でした。寅さんは、「生きていれば、いろいろなことにぶつかる。そういう時に、きちんと筋道を立てて、自分で考えることができるようにするためだ。」と答えます。誰かに決めてもらったり、誰かに責任をゆだねてしまったりすることなく、「自分の人生に関することを、自分で考えて、自分で判断して、自分で納得して生きる」ことの大切さを、寅さんは言っているのだと思います。大学に限らず、皆さんが今まで学んできたことの意味を、寅さんの言葉で説明できるのではないでしょうか。小学校~中学校~高校と学び続け、多くの教科・科目を勉強していく中で、皆さんは一言では表現しきれないたくさんのことを身につけてきたはずです。人間存在や人間社会への知識と洞察力、論理的・科学的な思考力と判断力、健康を保ち人生を豊かに生きるための知恵と教養、現実社会で働いて生活していくための実際的なスキル、他者と協働し互いを尊重して生きていく道徳的な思考の枠組みと感受性など。それら全てが、皆さんの「生きる力」であり、自らの「人生の宿題」に対しての「答え」を見つけていくための支えとなるものです。

 あなたの「人生の宿題」は何ですか? その「答え」を見つけるために、どうしますか?

 寅さんと満男の問答を、もうひとつ紹介します。

 満男「人間は何のために生きているんだろう?」 寅さん「生まれてきてよかったと思えるようなことが、時々あるよな。そのためだよ。」

 寅さんの言う「生まれてきてよかったと思えるようなこと」とは、「生きている幸せをしみじみと感じるようなこと」と言い換えてもいいかもしれません。寅さんの答えはシンプルですが、説得力があります。そう思いませんか?