小高生へ

「新年度=学びのスタート」「学びの意味とは何か」「優しく、強く」

 令和6年度が始まりました。生徒の皆さんは、この一年をどんなものにしたいと思っているでしょうか。

 4月8日の始業式では、校長式辞の中で2011年に起きた東日本大震災の2か月後に、新聞に掲載された人生相談についてお話ししました。相談者は女性の大学生の方です。その方は、東日本大震災当日、祖母と坂道を上って避難していました。ところが、祖母は「これ以上走れない」と言って座り込み、背負って行こうとする女性の背中に乗ることを強く拒否し、「行け、行け」と怒ります。女性は祖母に謝りながら、一人で逃げました。地震から3日後、祖母は遺体で発見され、「気品があって優し」く「私の憧れ」だった祖母の遺体が、体育館に「魚市場の魚のように転がされ」ているのを、女性は見ることとなります。そして女性は、祖母を見殺しにした自分を「一生呪って生きていくしかない」のかと思い、自分を責め続けているという相談です。この相談に対して、回答者の心療内科医は、手紙を読みながら涙が止まらなくなったと述べ、相談者が祖母を見殺しにしたのではなく、祖母は自分の意志で相談者を助ける道を選んだのであり、「誇りをもって生を全うした」はずだから、相談者は祖母の意志を受け継ぎ、生き抜いてほしいと励ましています。
 新聞に掲載された、この相談を読んだ時、私は「こんなにも深い悲しみがあるのか」と、胸が詰まる思いにとらわれました。相談者の方が、今はその悲しみを乗り越え、幸せな毎日を過ごされていることを願わずにはいられません。
 今年の元日にも、能登半島を中心とする大きな地震が発生しました。犠牲者の方々のご冥福をお祈りするとともに、いまだ復興の途上にある被災地の住民の皆様の生活が一日も早く改善されることを願いたいと思います。
 私たちの日常生活の中にある、思いどおりにいかないこと、辛いこと、苦しいことは、数え上げればきりがないかもしれません。でも、負けてはいけないと思います。少しずつでも前に進んでいこうとすることが大切です。そして、この世の中にある様々な悲しみや苦しみをなくしていけるように、私たちは学び続けていかなければなりません。
 私たちは、お互いを尊重し、お互いを大切にし合い、お互いに親切にし合い、お互いに助け合って生活していかなければなりません。切なく、寂しいことがあって、そのことを乗り越えようとする時、互いに寄り添い合う「優しさ」が「生きる希望」につながります。そして、高校時代に多くの教科・科目を懸命に学ぶことをとおして養う「思考力」・「物事の見方」・「考え方の枠組み」は、絶対的な正解のない「人生の問い」に対峙し、「自分の答え」を見つけるうえで役立つ「生きる力=強さ」につながります。私たちの日々の学びは、競争に勝つよりも、互いに助け合い、高め合うための学びととらえたいと考えます。皆さんには、高校生活の中で、互いを認め、励まし合う健全な友人関係を築き、一日一日を大切にし、「他者への優しさ」と「負けない強さ」を培っていってほしいと思います。

 新しい1年が、皆さんにとって素晴らしい1年となることを心から願っています。健闘を祈ります。