小高生へ(5)

お互いにリスペクトし合おう!!

 「校長室より」のページから、生徒の皆さんへメッセージを送っていきたいと思っています。感想や要望がありましたら、気軽に声をかけてください。

 皆さんには、友人を大切にしてほしいと思っています。「大切にする」とは、どういうことでしょうか。その答えのひとつは、「リスペクトする(尊敬する、敬意を表す)」ということだと思います。
 少し前に、ショパン・コンクール優勝者であるピアニスト、スタニスラフ・ブーニンのドキュメントをテレビで観ました。ブーニンは、左手の故障や左足の骨折手術のために9年間、演奏活動をしませんでした。55歳の彼がカンバックしたのは、日本人の妻やショパン・コンクール以来の盟友ルイサダ(ピアニスト)の存在がとても大きかったようです。ルイサダは久方ぶりのブーニンとの再会に、「我がピアノの王子! わが青春!」とブーニンを抱きしめ、「君は変わらない。いつだって貴公子のようだ。」と話しかけ、「なんて美しい手なんだ。この手を撮ってよ。」とカメラマンに言うのです。そして、演奏会を前に不安にかられるブーニンに、「君の音を届けることは、聴衆にとって最高の贈り物になるだろう。」と元気づけます。演奏会での夫の演奏を固唾を飲んで舞台袖で聴いていた妻は、夫の演奏がうまくいったのを見て、「やった!」と心からの喜びの声をあげます。妻や友人の愛情深い温かい支えがなければ、ブーニンのカンバックは難しかっただろうと思います。
 どんなに才能があっても、人間は自分一人で生きているわけではないのだと強く感じます。そして、厳しい競争と変化の激しい予測不可能な状況の中で生活することが避けられないなら、私たちを支えてくれるのは、身近な人たちとの信頼関係(心のつながり)なのではないでしょうか。お互いの個性を認め、お互いの存在を尊重し、お互いに支え合い、助け合うことで、私たちは「人生の坂道」を上り続けていくことができます。
 だから、自分が高校で出会った友人の誰に対しても、リスペクトしてください。歌にもあるように、誰もが「世界に一つだけの花」というべき存在です。そして、私たちは「自分のため」だけに生きても幸せではなく、自分が「誰かのため」にプラスの存在となることを喜びと感じる「善性」を備えています。現代は情報過多のために、「出合い」の意味が軽くなり、「人」への敬意も忘れられがちです。そのような状況に流され、身近な友人や家族へのリスペクトが置き去りにされることは、幸せなこととは言えないと思います。なぜなら、リスペクトを忘れた後に残るのは「孤独」でしかないからです。孤独が一概に悪いわけではなく、「価値ある孤独」もありますが、それは他者との関わりを大切にし、自他の存在がお互いにプラスであるという前提があっての孤独だと思います。(マザー・テレサは、「この世の最大の不幸」は「誰からも自分は必要とされていないと感じること」だと述べています。)
 小高生の皆さん、お互いにリスペクトし合おう‼ お互いに励まし合い、助け合おう‼ そうすることで、私たちは強くなれる。相手を尊敬することは、自分を尊敬すること。小山高校が、温かい敬愛の雰囲気に包まれることを願っています。