小高生へ(19)

「夢を叶えたKさん」第3回

 「校長室より」のページから、生徒の皆さんへメッセージを送っていきたいと思っています。感想や要望がありましたら、気軽に声をかけてください。

 Kさんについての続きです(事前に本人の許可を得ています)。

 Kさんが大学4年生だった年の秋、Kさんの通っていた特別支援学校から、私にひとつの連絡がありました。

 その連絡は、Kさんが栃木県の中学校英語の教員採用試験に合格したという知らせでした。この時の私の驚きと感動は、一言では言い表せません。正直なところ、厳しいのではないかと思っていました。階段の多い中学校の建物を見る度に、Kさんの夢との隔たりを感じずにはいられませんでした。でも、Kさんは採用試験に合格しました。Kさんは夢を叶えたのです。なんて素晴らしい!!

 生徒が夢を実現させること・・・。教師にとって、これにまさる喜びはありません。「生徒の喜び」を「我が喜び」とできることが、教師の仕事の醍醐味だからです。そういう嬉しいことが、教員生活の中では多くありますが、Kさんの夢が叶ったことは、私にとって本当に、本当に、大きな喜びでした。そして、Kさんは私に教えてくれたのです、「夢は叶う」と。夢は叶うのです!!

 私たちは、人生において何らかの課題を抱えていないことはありません。誰もが「人生の宿題」を抱えて、日々の生活を送っています。全てが意のままだという人間は、きっといないはずです。誰もが失敗や挫折を経験し、失意の思いにとらわれたことがあると思います。たとえ成功者に見えても、人に見せない努力や将来への不安のために、悩んだり苦しんだりしているのではないかと推察します。つらいことや、納得いかないことは、たくさんあります。でも、自分だけがそうなのではないことを、忘れてはいけないのではないでしょうか。Kさんは、自らの障がいについて「自分にとってマイナスではなく、障がいがあったからこその自分なのだ」と言いました。Kさんは、「自分の障がいを『盾』にしてはいけない」と言って、世の中への不満を口にすることはありませんでした。
 私たちは、誰もが傷つき、誰もが悩みながら、生活しています。私たちは、一人ひとり異なった個性をもち、それぞれの課題に向き合いながら、生きています。だから、私たちは互いに理解し合い、寄り添い合い、尊重し合い、励まし合い、高め合いながら、学びを重ね、努めていくことが大切です。この社会にある多くの悲しみや苦しみをなくし、皆がそれぞれに幸せに暮らしていくことができるように、知恵を寄せ合っていくことで、よりよい在り方を求めていけるはずです。
 Kさんの存在は、Kさんが教師として勤める中学校で、多くのことを生徒たちに教えてくれるだろうと私は信じています。自分の気持ちが弱くなりそうな時、私はKさんのことを思い出します。Kさんが、足の障がいに負けないで、それを受け入れ、人生における意味すらも見出し、強く生きてきた、そして、教師になるという夢を叶えて、今も立派に生活されていることを、いつまでも忘れず、尊敬の念を抱き続け、私もKさんに負けないように、何とか「今日」という日を乗り越えていこうと思います。

 夢は叶う!! Kさん、ありがとう!!

 Kさんのお話を、皆さんはどのように受け止めてくれたでしょうか。よかったら、感想を聞かせてください。