校長室便り

【高2】「トビタテ!留学JAPAN」 テイクオフ

5月23日(金)放課後、高校2年1組の細井光希さんが、「トビタテ!留学JAPAN」で、8月6日から3週間、南ヨーロッパの「マルタ共和国」で留学することについて、報告に来てくれました。

細井さんは、高校1年生の時、「トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム アカデミック(テイクオフ)」に応募し、採択されました。しかし、その年の夏休みは、コロナ禍で出発が見送られたため、今回、ようやく実現できることになりました。

1年前、どのような思いで応募したのか、また、出発できなかったこの1年間、どんなことを考えていたのか、などについて話をききました。

Q1:細井さんの留学の目的を教えてください。

→留学計画のタイトルは、「バレーボールと思いを『繋ぐ』~真の強さと在り方を探る」としました。バレーと歩んできた私の15年間をアピールしました。


Q2:細井さんにとって、バレーボールはどのような存在だったのですか?

→私は那須塩原市で生まれ、小学3年生の頃から、両親の影響で、バレーボール部に入部しました。小さな小学校だったので、女子のほとんどはバレー部に所属し、小6の時には、歴代最強世代となり、地区大会、県大会とハードな練習に打ち込んできました。私は、決してうまい選手ではなかったのですが、いつもいっぱいいっぱいで、追い込み型の練習や怒鳴り声、自分のせいで起こる連帯責任の罰ゲームなどが怖くなり、「下手でも頑張るから見捨てないで」「何のためにバレーをしてるのだろう?」「勝つため、って辛いことしかない」と思いながらバレーを続けてきました。

広い世界をみるため、中学は佐附中を受験し合格しました。現在は、親元を離れ、祖父母の家で生活していますが、中学でもバレー部に入部しました。チームのモットーは『全員で勝つ』ことでした。チームの中で競い合ってきた私は、とても戸惑いました。人数不足で思うように練習できなかったり、試合で1セットもとれなかったり、今までとは全く異なる壁にも直面しました。私は、キャプテンでありながら、『負ければ怒鳴られた』以前の恐怖に打ち勝つことができず、一人足を引っ張ったまま引退を迎えました。私の心には、最後の最後まで自分に負けた情けなさと恥ずかしさで、後悔が残りました。

現在、高校でもバレーボールを続けていますが、なかなか勝てなかった中、先日行われた南部地区の大会で2回勝てたことで、今まで続けてきたバレーボールの楽しさを改めて実感することができました。楽しいはずのバレーを心から楽しめた自分がいました。

今の日本のスポーツ界には「精神的な追い込み」や「肉体的追い込み」、「過剰な縦社会・実力社会」「女子アスリートへの体調管理・不自然なアングルやタイミングの撮影」など、多くの問題があるように感じています。それらを改善すべく最近では、元日本代表の益子直美さんが、「選手を怒らないバレーボール大会」を開催されたり、大山加奈さんが「過度なストレスからくる生理不順」などについてSNSで発信したり、指導方法などの改善に向けた活動も活発になってきています。また、ドイツ人のバレーボールコーチが「日本人は苦しみに耐えることを精神力というが、ドイツでは苦しい時にクリエイティブになれることを精神力という」と語っているものもありました。

今回の留学の目的は、ヨーロッパで『スポーツの本来のあるべき姿』と『スポーツの強さ』について研究することです。この2つについて学び、今の日本のスポーツに必要なこと、あるいは足りていないことを見いだし、最終的には『真のスポーツの強さと在り方』の答えを求めたいと思います。



Q3:留学先に「マルタ共和国」を選んだのはなぜですか?

→語学研修(英語)と異文化交流の両方ができることに魅力を感じました。留学期間中は、「シュプラッハカフェ・マルタ」という語学学校に入り、外国の人たちと寮生活をします。午前中は毎日、英語の授業を多くの国の人たちと受け、午後はビーチバレーや地元のバレーチームで練習することを計画しています。スポーツは万国共通なので、みんなと仲良くなれると思います。もう一つ、海が見えることは、山の中で育った私にとって、唯一の強い希望でした。


また、トビタテ!留学JAPANプログラムは、日本の伝統文化を伝える、という使命もあります。私は、自分の勝負飯である「おにぎり」を同じ寮の生徒に振る舞います。世界に誇る日本のお米を使って、おいしさと沸き上がるパワーを届けたいと思います。それと、折り紙を伝えたいです。その中でも、みんなで作り上げる千羽鶴に魅力を感じています。つなげてできる「千羽鶴」には「団結・応援・祈願」の意味もあり、スポーツにもつながっています。千羽までとはいかなくても、ミニサイズで実際に作って、この美しさを伝えたいです。


Q4:この1年間でどんなことを考えましたか?

→学校の課題研究のテーマを「国内のスポーツにおける問題」と設定し、『うーんどうやって楽しむ?』というタイトルで研究しました。私の他に、福知さん、高瀬さん(ボート部)、寺内さん(ラグビー部)の4人の研究班で、それぞれの課題について、本音で意見を言い合えたことが、とても良い体験でした。

私は、勝利至上主義やジェンダーの問題など、今の日本の現状を知ることで、マルタで何を学び、どう反映させたいかを具体化することができました。

その中で、私が最も尊敬する元バレーボール日本代表の大山加奈氏への取材ができたことが印象的でした。ダメ元で、試しにTwitter にDMをしたら、大山さんから、ぜひ話がききたいとオファーがあり、実現しました。Zoomを使って、1時間以上、話をする事ができました。今回の留学の成果もプレゼンして欲しいと言ってくださいました。

また、スポーツにまつわるイベントがたくさんありました。
東京五輪では、LGBTQへの対応で、トランスジェンダー選手(男→女)に対して、日本人は外国より理解が進んでいないことがわかり、栃木国体では、佐野市でバレーボール大会が開催されるため、精神障害者の部の補助員をする体験ができました。誰でも楽しめるスポーツの魅力について、考えることができました。



Q5:最後に、一言お願いします。

→私は、バレーボールとともに成長してきました。小学生の頃から悩み、ときに恐怖さえ感じたバレーボールですが、ここまで続けてきたのは、仲間と、思いとボールを『繋ぐ』面白さを超えるものが何一つ見つからないくらい、本当に楽しかったからです。だからこそ、自分の経験を通して、日本のスポーツ界で感じた様々な問題を解決し、私の大好きなアニメ『ハイキュー!!』のように、『さあ今日もバレーボールは面白いと証明しよう』と思います。


*この留学にかける細井さんの思いが、じんじんと伝わってきました。
マルタでの留学の成果を楽しみにしています。本校生にもぜひ、プレゼンしてください。応援しています。