校長室便り

【高校】日本地学オリンピック本選出場

国際科学オリンピックの一つである日本地学オリンピック」の本選に、高校1年の店網航輝(たなあみ こうき)君の出場が決定しました。応募者1635名中10位の成績で、二次予選を通過しました。

2月1日に実施した中高の「いじめ・教育相談アンケート」の自由記述欄を読んでいたら、嬉しかったこととして「日本地学オリンピックの本選出場が決まったこと」と書いてあったので、詳しく話を聞かせてもらうことにしました。


店網君は、小学校の頃から星を見るのが大好きで、小学校2年生の時、貯めたお小遣いと両親に出してもらったお金で、「天体望遠鏡」を買ったそうです。それを使って「土星」や「アンドロメダ銀河」などを観察するのが楽しみとなり、やがて天文学に興味を持つようになりました。附属中3年の時に、早期入部で高校の「天文同好会」に入り、小学2年生の時に買った「天体望遠鏡」を持ってきて天体観測をしていたそうです。今も天体ドームの中においてあるということなので、放課後、見せてもらいました。

  (↑りっぱな天体望遠鏡です!)

ところで、「地学」ってどんな学問かわかりますか?
中学生の理科で、地質や気象、天体、火山、地震などについて勉強しますが、それらを全部ひっくるめて「地学分野」と呼んでいます。他には、「生物分野」「化学分野」「物理分野」などがあります。しかし、高校に入ると、生物、化学、物理は、さらに詳しく学びますが、日本の多くの高校では、地学の授業は開設していません。栃木県でも、多くの高校ではかつては地学の授業がありましたが、今は、地学の教員を採用すらしていません。今年度から始まった「大学入学共通テスト」でも、理科は得点調整がありましたが、地学は受験者が少なすぎて、得点調整の対象にもなりませんでした。
佐野高校でも、私が初任で赴任した1980年代は「地学」の授業があったと思います。地学の教員もおり、地学教室や天体ドームもあるくらいですから、県もかなりお金をかけて施設整備をしていたことは間違いありません。「地学部」には合宿をしながら天体観測を行う多くの部員がいました。やがて、教育課程に地学がなくなり、授業からも地学が消えました。実は、現在の旭城ホールは、本校の創立100周年を記念して、授業がなくなって使わなくなった「地学教室と地学準備室」をぶち抜いて、改装して作ったものです。

そんな状況なので、中学時代に地質や気象、天体、地震などに興味があっても、多くの生徒は、高校で学ぶことが出来ないというのが、我が国の現状です。(おそらく、大学入試の受験科目で重視されなくなってきた影響もあると思います)

このような中で、「地学オリンピック」に挑戦できるのは、高校で地学を勉強している生徒にある程度限られてくると思われます。なにしろ、出題範囲が、教科「地学基礎」からと明記されていますから…。本校では地学基礎は履修できませんので、店網君は地学基礎を独学でマスターしたことになります。

一次予選(12月20日)では1635名受験
し、50点満点で44点、全国13位で通過しました。二次予選(1月24日)は207名が受験し、50点満点で40点、全国10位で、本県では唯一「本選参加資格者」と認められました。この資格は、すでに大学の総合型選抜(旧AO入試)等で評価されるレベルのものです。
(乱暴なたとえをすると、英検1級くらいの価値はあるのでは?)


本選は、茨城県つくば市で3月14日~16日にかけて、泊りがけで、実技試験(鑑定等)と筆記試験が行われる予定でしたが、新型コロナの影響で、3月15日(火)にオンラインで記述式の筆記試験のみを実施することになりました。本選には約40名が参加し、その中から4名が日本代表として選ばれ、「国際地学オリンピック」に出場することになります。本選もがんばってください!

最後に、店網君の将来の夢を聞いてみました。
→大学で天文学を学び「天文学者」になりたい、と即答でした。国立天文台の副台長の渡部潤一さんのような天文学者が目標だそうです。そのため、日本で唯一理学部に天文学科があり、多くの天文学者(渡部潤一さんもその一人)を輩出している東京大学に入りたいということでした。(以上、紹介することは本人了解済です)

*将来の目標を定め、今を頑張っている素晴らしい若者に出会うことができました。
(実は、佐野高校や附属中にはこうした生徒が近年、増えてきました。まだまだ知らないだけで、熱い思いを持っている生徒はたくさんいるのかもしれません。)

 アンドロメダ銀河(Wikipediaより)