校長室便り

【高2】総文祭弁論部門、結果報告

8月4日(木)午後、弁論部門「優良賞」(8位)を受賞した若林仁瑛君が、校長室に報告に来てくれました。立派な賞状とおしゃれな盾を見せてくれました。

若林君の弁論のタイトルは「慣れることの恐怖」でした。発表は6分以上7分以内と決められています。

 

Q1:「慣れることの恐怖」はどのような内容ですか?

→「皆さんは、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった時の衝撃を今でも覚えていますか? 私は、その衝撃がだんだん、日常の感覚になっていくことの危機感を伝えたいと思いました。そう思うきっかけとなったのは、あるニュースでの報道でした。ニュースのアナウンサーは、ウクライナ軍の作戦により、ロシア軍の5人の将校を殺害したことを喜ばしいことのように伝えていました。私は5人の人間が殺されたことを喜んだり褒めたたえたりすることに、大きな危機感を感じました。それは、非日常的な報道に私たちが慣れてきたことが引き起こした異常なことであり、それこそが恐怖なのではないでしょうか。こうした感覚は、今後、私たちの周りでもウクライナで起こったようなことが起こりそうな時に、それを抑止する力にはならないでしょう。私たちは、今、ウクライナを救うことはできないかもしれませんが、未来の戦争は防がなければならないと思います。

慣れはどのようにして生まれてくるのか。それは、戦争を見る視点だと思います。政治的な目線だけだと、戦争で亡くなった人間は数としか記憶に残りません。人間を殺すという本質を忘れてしまうことで、感覚の慣れが生じてしまうのではないでしょうか。

それでは、私たちは何をすればよいのでしょう。それは、一人の人間にとっての戦争という視点を忘れてはならないことだと思います。人間は殺されることによって、すべてが消えます。その瞬間を想像してください。今、戦争反対と唱えることに対して、様々な立場からいろいろな考えが語られています。しかし、それでも私は、戦争に慣れてはいけない、と叫び続けたい。それは、未来の戦争を防ぐことでもあります。皆さんは、どう考えますか?」といった内容です(以上、要約しましたが、若林君の伝えたいニュアンスとは若干異なっているかもしれません)

 

Q2:優良賞(8位)となったことに対して、どう思いますか?

→「すごく嬉しいです。本番までに、自分の一部となるくらい、繰り返し練習しました。100回以上はやったと思います。去年の県大会では、いろいろな先生のアドバイスをいただきながら、環境をテーマにした弁論を完成させましたが、今回は自分が一番伝えたいことを妥協せずにストレートに伝えることが出来ました。それを許してくれた先生方には本当に感謝しています。自分でここまでやれたことは、大きな自信になりました。また、これまで、自分は早口すぎたり、活舌が悪かったりすることをコンプレックスに感じていましたが、そうした欠点があるにしても、伝えきることが出来た、さらに、それを評価してもらえたことが、とても嬉しく思いました。」

 

Q3:全国各地の代表の弁論を聞いて、どんなことを感じましたか?

→「自分以外の弁論もほとんどすべて聞きました。一人一人、考えていることは全然違っていました。そうやって考えてきたのか、そういうアプローチもあるのか、という発見の連続で、自分の考えの幅が広がりました。最優秀賞に選ばれた生徒の弁論は圧倒的に素晴らしかったし、逆に、自分の弁論をすごく良かった、と言ってくれる生徒もいて、とても勉強になりました。」

 

*今回の若林君の弁論は、単に「優良賞になって良かったね、頑張ったね」という話ではなく、多くの人たちの生の考えに触れ、自分の生き方を改めて考える大きなきっかけになった、ということが伝わってきました。そのことは、若林君の弁論で伝えたかった「一人の人間として戦争をどう考えるか」という問いに対する答えでもあったように感じました。素晴らしい経験をしたことを心から称えます。