校長室便り

【中2】「佐野市理科研究展覧会」最優秀賞②

中学2年生の部で「第17回佐野市理科研究展覧会」最優秀賞(県出品)を受賞した松葉紳一郎君の作品について紹介します。研究題目は「微生物の観察 第4巻」です。


この研究は、松葉君の継続研究の5年目になります。小学4年生の時に、自宅の庭のバケツに溜まっていた水の微生物の観察をしたのがきっかけで、微生物への興味関心が広がり、研究もどんどんシンカしてきました。これまでにまとめた研究の成果は、以下の通りです。

向かって右から、微生物の観察「第1巻」(小5の時にまとめました)、真ん中の3冊が「第2巻」(小6)、左側が「第3巻」(中1)、そして、手に持っているのが「第4巻」(中2)です。第2巻までは手書きでしたが、第3巻からは、パソコンで作成しているので、コンパクトになっています。

今回の「第4巻」の全貌を紹介するのは、かなり困難です。本文が172ページあり、読むだけでも2時間くらいはかかりました。とりあえず、研究の概要のみを紹介することにします。研究論文は以下のような構成になっています。


「各地の水の観察」では、県内の21地点から水を採取し、そこに生息している微生物の種類などを観察しています。これは、5年前から続いていることで、松葉君の研究の原点と言えるものです。いつか新種を発見したいという夢があります。以下のページのように、採取地点ごとにまとめられています。


「ひょうたん池の観察」では、松葉君の母校である旧三好小学校にある「ひょうたん池」にいる微生物の観察を5年間続けています。三好小学校は、松葉君の卒業とともに廃校になってしまいましたが、今も管理されているので、毎月1回、「ひょうたん池」で「定点観察」をしています。季節による周期的な変化などが見えてきます。


今回の観察では、ネンジュモという微生物の発生する量が年によって変動することに興味を持ち、気温などの気象との関係について考察しています。


「ボルボックスの研究」は、今回の研究の中核を成すものです。昨年度の研究で、初めて発見・培養し、その生活史について解明しました。今回は、「ボルボックスの越冬」、「最適な明暗周期」、「休眠芽の発芽」などに挑戦しました。



まず、「越冬」については、自然状態ではありえないことですが、一定以上の水温を保つことで、冬でも増殖することがわかり、越冬させることが可能となりました。(→成功しました)


2番目の「明暗周期」については、人工的な明暗周期を作るため、本格的な「LED照明装置」を自作しました。約3か月にわたって、明暗12時間ずつの周期を作り、増殖するかどうかを調査しました。(今回は、結論が出ませんでした。)



休眠芽の発芽」については、ボルボックスは冬、気温が低いと休眠芽を残して死んでしまいますが、春になると再び、休眠芽から発芽して、ボルボックスの姿になります。自然の状態では、休眠芽は発芽しているのですが、人工的に発芽させることが出来るか、つまり、人工発芽に挑戦しました。(休眠芽を発芽させることはできませんでした。なかなか難しそうです。)このテーマは、来年度の大きな柱になるそうです。

最後の「微生物活用法」については、微生物を植物の肥料として活用できないかを昨年度からの継続研究で、様々な検証実験を行いました。


以上のように、膨大なデータによる研究です。松葉君の研究の素晴らしいところはたくさんありますが、特筆すべきは以下の3点です。

(1)微生物を観察しているうちに、疑問点(謎)が湧いてきて、それを解明するために、自分で文献を調べ、仮説を立てて実証していることです。まさに、研究者がやるべきことを当たり前のようにやっていることです。

(2)長期間にわたる継続的な観察と仮説を証明するための短期的な実験を並列して進めることが出来ることです。これは、自然を観察する際に、何年間かの大きな時間の流れと、数か月の比較的短い時間の流れを両方使い分けることが出来るということで、研究者としての懐の深さに繋がると思います。

(3)研究に没頭すると周りが見えなくなる、という人も多いと思いますが、松葉君は、自分が研究を続けられるのは、家族や周囲の人たちが理解し支えてくれていることを自覚・感謝しており、自分だけで突っ走ることはしないことです。研究は大切ですが、世の中にはそれ以上に大切なものがあることを知っており、人間として素晴らしいと思います。

*今後の課題としては、一度、大学の専門家の指導を受けた方がいいと思います。(一緒に考えてみましょう。)