校内散歩

校内散歩

校内散歩40 「桜花寮」

校内散歩40「桜花寮」 高校には「在校生登校不可」の日がある。言うまでもなく選抜検査(入試)当日である。その日ばかりは部活動も一切無く、静けさの中で教員は入試業務にかかり切りになる。
 翌日、採点の合い間にふと気がつくと、楽器の音色が聞こえる。吹奏楽部は、いつもは四階で練習をしているので、職員室にいると吹奏楽の練習音は降ってくるのだが、今日は水平方向から流れてくる。校舎内は入試事務期間は立ち入り禁止になるので、部員達が桜花寮に楽器を運び込んで練習しているためだ。
 桜花寮は、二階建ての合宿所で、一階は食堂、厨房などがあり、二階は和室の宿泊施設である。運動部員や生徒会役員などが合宿するほか、恒常的に琴部が練習に使っている。また時に、吹奏楽部などがこうして練習に使う。それから、「桜花寮」の名にふさわしく玄関脇には枝垂れ桜が優しく立っている。今年もそろそろ桜の花が楽しみに待たれる季節になってきた。
 ところで、平成22年度の一年間、このページで真岡女子高校の校内外各所を案内させていただき、40箇所をご紹介することができました。お読みいただいた皆様と、写真撮影その他でご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。

校内散歩39「冬のプール」

校内散歩39「冬のプール」 都市伝説だろうか? 生徒から「先生、学校のプールに金魚が泳いでます」と言われた。冬の半ば凍りかけたプールに、赤い身を翻してひらりひらりと金魚が泳いでいる……ちょっとミステリーではないか。
 こわごわ見に行くと、いたいた。プールの日当たりの良い側に魚が泳いでいる。金魚、いや、もう少し大きい。驚いて体育科の先生に尋ねると「冬でもプールの壁にノロがはるので、薬品を入れたくないから魚に食わせているんですよ。あれは金魚と鯉です。一冬で結構、でかくなりますよ」
 本校の水泳部も、優秀な選手を輩出し、このHPでも既報の通り県大会総合優勝を果たし、国体・インターハイ・国際大会出場などの成果を挙げ、県体育協会スポーツ顕彰その他表彰も多数受けている。つまり、このプールは夏は生徒が「でかく」なり、冬は金魚や鯉が「でかく」なるプールなのかも知れない。
 3月が近づき、少しずつ水が温んできた。プール掃除まであと三か月ほど、魚たちには頑張ってもらおう。なお、掃除の時には、金魚や鯉は丁寧に掬われてS先生宅の池に移されるとのことなので、ご心配なく。

校内散歩37 「机上」

校内散歩37「机上」 (自省をこめて書くのだが、)職員室の机上はきれいに整理整頓しておく、べきなのだ。一日の終わりには全ての仕事が片付き、すっきりと机上に何もない状態となっていることが望ましい。しかし実際には、これが難しい……。言い訳になるが、次々と書類が回ってくるし、教材研究の素材、採点したテスト、添削したノート、翌日配布するプリントなどが山積みになってしまう。それで、時々職員室で書類や書籍の「雪崩」が起きる学校もあるようだ。
 しかし、取り繕うわけではないが、真女高の職員室は比較的きちんとしている方だろう。
 本校で楽しいのはALTの先生の机だ。ハロウィン、クリスマスなど季節の行事に合わせて愉快な小物が置かれていたり、先生や生徒にあてたメッセージカードが置かれていたりする。先生はスヌーピーがお好きなので、人形や、イラストなど何匹ものスヌーピーが遊んでいる。真女高以外の学校での授業のため不在の日でも、机上から先生のにこにこ笑顔が感じられる。質問に来るついでに、スヌーピーが何匹いるか、数えてみるのも楽しいかも知れない。

校内散歩36 「灯油タンク」

校内散歩36「灯油タンク」 暖房に灯油を使用している学校では、冬場になると手押し車に18リットル入りの赤いポリタンクを乗せて運ぶ姿がよく見られる。しかし、真岡女子高校では生徒達が運ぶ時には、小型の白い10リットル入りポリタンクが使用されている。従って給油もこまめにする必要があるので、週に2回の給油日が設定されている。小型タンクの採用は「やっぱ、女の子だかんなあ。重いのはかわいそうだんべ(某先生)」というのが理由である。(パワフルな真女高の生徒なら、赤いポリタンクでも平気で運んでしまいそうな気もしないでもないが…。)
 今年は様々な海外情勢の関係もあり、灯油代が高くなっているようである。しかし今のところ、ストーブ使用制限などはなく、この厳しい寒さを乗り切れているのは有り難いことである。
 また、生徒諸姉には、公仕さんがこまめに給油してくれていることも知って於いて欲しい。特にセンター試験以降、図書館や学習室(自習室)などは、すぐにタンクが空になってしまうので、しばしば見回ってくれているのである。温かい学習室で存分に勉強し、感謝の思いの分も入試突破に向けて欲しい。 この可愛らしいタンクをしまう、笑顔溢れる春が来るまで、あと少し。

校内散歩35 「冬の欅」

校内散歩35「冬の欅」 凛々しい。神々しい。いや、まだ言葉が足りない。
 西行は伊勢神宮に参拝して「なにごとのおはしますかは知らねどもかたじけなさに涙こぼるる」と詠んだそうであるが、本校の冬の欅は、この歌の一節がつい口をつくほどに神々しく、自然の驚異への畏敬の念を強くせずにはいられない。
 見よ、蒼穹を背に、精一杯のびる枝えだの強さを。
 葉のない季節だけに、何の飾りも身につけず、きっぱりと強いその線は、欅の真髄を感じさせる。あんな生き方もあるのだと思う。
 また、部活動の行き帰りに、時に足をとめて「ふうっ」と息をついて欅を見上げている生徒がいる。見慣れてはいても見上げずにいられない、その気持ちを「畏怖」と呼ぶのだろう。
 畏怖の先にこそ、本当の自然環境保護もあるのだと思う。黙って立つ欅が様々なことを教えてくれる冬である。

校内散歩33「進路学習室」

校内散歩33「進路学習室」 管理棟一階の進路室に近いところに学習室がある。ここは生徒達の自習用の部屋である。普通教室よりはかなり広く、隣の席が気にならないような目隠しのついた机が、十分な間隔を置いて配置されており、平日は18時20分まで、学校休業日は8時から16時まで開放されている。冬季休業中も勿論毎日開放されており、図書館や教室で学習していた生徒と合計すると、この大晦日には約100名、元旦には約70名と、多くの者が勉強のために登校した。もちろん、ほとんどがセンター試験を目前にした三年生であるが、一、二年生も混じっているのも頼もしく感じられる。
 そっと学習室の戸を開けると、独特の空気を感じる。それは主体的に勉強する者達だけが醸し出すことのできる空気だ。それぞれに自分の夢を確実に持ち、それに向かうための課題を認識し、これを克服せんとする意欲に満ちた者達の顔は、既に自立心に満ちた女性の顔だ。美しい、と思う。
 頑張れよ、頑張れよ、と声にならない声をかけ、冬季課外をし、大晦日も元旦も出勤してくれた先生方の思いも受け止めて、生徒諸君よ、2011年も努力の花を咲かせよう。

校内散歩34「第一体育館」

校内散歩34「第一体育館」 寒稽古の季節である。剣道部顧問は六段の段位を持つ達人であるが、その達人でさえ、真冬の早朝に体育館に素足で降り立つと、冷たいというより「痛い」という。まして剣道部の生徒達はさぞや冷たかろうと思うのだが、鍛えられた部員達は全く顔には出さない。胴の紐を背中に回してきりりと締めて竹刀を構える。顧問の気合い一閃、稽古が始まると床面を弾むように蹴り、前後に擦り、顔が紅潮してくる。打ち込みをする頃には寒さ、冷たさも忘れているようだ。
 剣道には「一眼 二足 三胆 四力」という言葉があるそうだ。遠い山を見据えるような眼、動じない胆力とともに強い足があってはじめて力が発揮できる。この言葉は、剣道ばかりではなく人の道の教えでもあろう。
 第一体育館を主な練習の場としている部活動には、剣道のほか、バドミントン、バスケットボールがある。それぞれ寒稽古と呼びたいような寒さの中での練習だが、動じずに「文武両道」の道を今日も走っている。さすがに真女高の生徒はやわではない。
 今の子にして風の子よ寒稽古 (稲畑汀子『ホトトギス』)

校内散歩32 「桜の更新」

校内散歩32「桜の更新」 女流作家の幸田文の『木』という著書の中に、「北海道の自然林では、エゾ松は倒木のうえに育つ」と始まる、倒木更新の話がある。厳しい大自然の中で育つエゾ松は、老いれば倒木となり、その樹幹の上に若い命を育むというのだ。命の輪廻を描く、非常に印象的な名文である。
 本校の桜は現在86本。実直に働き通してきた老人の節くれ立った手のような、こぶだらけの幹が目立つ桜も多い。教室棟の前の8本の桜も年老いて、さらに倒れる危険さえ出てきたので、同窓会の援助を得て更新することとなった。もちろん町中では倒木に芽吹くのを待つことはできないので、新しい木を植えるのではあるが。
 工事をする朝には事務長さんがお酒をまいて、引退する桜たちにお礼の心を示してくださった。みんなに見送られて古い桜は若い桜に場所を譲る。若木もちゃんと同じく8本、植樹された。来春には、若い花をつけ始めるはずである。
 学校とは、こうして更新を繰り返す場なのだな、と改めて思う。

校内散歩31 「第二体育館」

校内散歩31「第二体育館」 12月2日は期末考査の最終日だった。清掃の終了を待ちかねたように生徒達が部活動の場に飛び出していき、校庭、第一体育館、そして第二体育館からも元気な声が響く。
 その日、校庭の周囲を見回っている時に、近隣の方に声をかけられた。
「しばらく静かだったけど、今日は元気な声がしますね」
「テストが終わって部活ができるから、生徒達も嬉しくてしょうがないんでしょう。ちょっと元気すぎますか?」
「いやいや。あの声に、こっちがいつも勇気づけられてるんですよ。部活動をやって頑張っている声はいいですよ」
 いつもながらありがたい言葉である。
  本校の第二体育館では、主にバレーボール部、卓球部、ダンス部が活動している。それぞれ県内でも強豪なので、平日も遅くまでライトがついているし、練習試合に訪れる学校も多く、土日も賑やかなことが多い。懸命に活動している生徒達を見守り、そして声を聞いて応援してくださる地域の皆様に、深く感謝申し上げます。
☆写真は、インターハイの試合映像を見ながら反省をする卓球部員たち☆ 

校内散歩30 「秋の欅」

校内散歩30「秋の欅」 真女高の秋は金色である。
 校庭の三本の大欅が広げた?の天蓋が、端から少しずつ黄色みを帯び、ふと気づくと金色に輝いている。と思う間もなく、天蓋の金色の布は、風によってはらはらと少しずつほどけていく。あとはグランドに茶色がかった敷物として広がっていくばかりだ。
 清掃の時間になると、敷き延べられた秋の贈り物を生徒たちが片付けていく。箒とちり取りと60リットル用の大きなゴミ袋を使って落ち葉を片付ける合間に、嘆声が上がる。「きれいだねー。」「すごいよねー。」と、大欅を見上げる、その生徒達の素直なまなざしが私は好きだ。落ち葉掃きを嬉々として楽しんでいる姿がいいなあと思う。
  生徒達の欅を、未来を見上げる顔を見たくて、今日も「落ち葉掃き部隊、出動!」と、声をかける。箒を握る手の上にも、またはらはらと金色の光が降りかかる。

校内散歩29 「ランチボックス」

校内散歩29「ランチボックス」 生徒のお弁当をさりげなく見ることがある。男子高校生の弁当箱は「ご飯とおかずの二段重ね、カロリー十分、おやつのおにぎり付き」という栄養満点愛情満点のものが多かったように思う。女子高校生の、つまり本校生のものは「可愛いランチボックス、彩り美しくカロリー抑えめ、果物付き」であろうか。変わらないのは愛情満点というところ。写真のランチボックスの持ち主は三年生だが、親御さんの心配りが十分に伝わってくる。風邪ひくな、今日も頑張れ、そんな願いをこめて作っておられるのだろうと想像する。「自分で作っています。」という生徒も結構いて、それにも感心させられる。
 三年生は受験までの日にちも迫ってきたところだが、しっかり栄養を摂って自分の精一杯の力を発揮せよ。そんなことをつぶやきつつ、機会があると生徒のお弁当をちょこっと見せてもらっている。

校内散歩28 「秋の日のヴィオロンの」

校内散歩28 「秋の日のヴィオロンの」 よく晴れた秋の日の、本校の中庭は本当に心地よい。異国の公園を彷徨っているような気分になることもある。白い校舎、樹木、青銅のベンチ、そして青空。そろそろ桂や桃などの木々は葉の色を変えようとしており、足下の枯れ葉が優しく夏の思い出をささやく。
 オトナはどうしてもヴェルレーヌの有名な詩(Chanson d'automne)を思い出してしまう、そんな美しい光景だ。
  秋の日の/ヰオロンの/ためいきの/身にしみて/ひたぶるに/うら悲し。
 実際に耳に響くのは、吹奏楽部員達の練習している、トランペットなどの元気のよい音色ではあるが。曲目は「嵐メドレー」で、近々、真岡鐵道の秋の観光シーズンのイベントの一環として、真岡駅前で合同演奏をするということもあり、練習にますます熱が入っている。
  ヰオロン(ヴァイオリン)であれ、トランペットであれ、音楽の似合う中庭である。

校内散歩27 「もこもこ」

校内散歩27「もこもこ」 真女高に赴任して楽しい驚きを感じたことはいろいろあるが、生徒達の「ひざかけ」もその一つだ。
 真女高は建て付けが悪く隙間風が吹く……、というわけでは決して、ない。耐震工事も済んでおり、しっかりした建物である。また、真岡市は栃木県の南東部に位置しており、県北地区と違って特に寒い地域というわけでもない。しかし、まだ秋というのに、女生徒達はひざかけを愛用している。
 もこもこ。ふわふわ。カラフル。
 授業中は、そんなひざかけの花が机の下に咲いている。
 真女生達は運動部員も多く、全体にパワフルなのだが、寒さには弱いのだろうか? ちょっと不思議な光景である。
 もしかしたら、寒さ対策というよりは、もこもこ、ふわふわの「ひざかけ」に癒されたいのだろうか…? と考えてもいる。

校内散歩26 「姿見」

校内散歩26「姿見」 各階の西トイレ前に、大きな姿見がある。縦1・2メートル、横1.5メートルほどのもので、かなり古いもののように思われる。体育の授業の後などに、しげしげとのぞき込みつつ髪を整えている生徒も多い。服装指導の折などにも使われるようである。
  「よのつねの光ならねばます鏡 そこまですめるさとりをぞしる『千載和歌集』」
 こんな風に「かがみ」は悟りとも結びつけられ、単にものを映すのみならず、「手本、模範」という意味で使うときは「鑑」の文字をあてることも多い。
 なお、上記の和歌の「ます鏡」とは「ますみの鏡」のことで、曇りなき鏡の意味である。そうかと思えば、次のような優美な和歌もある。
  「年を経て花の鏡となる水は ちりかかるをや曇るといふらん『古今和歌集』」
 真女高の姿見は、たくさんの生徒達の姿を見てきた。これからも、きちんとしたセーラー服姿の生徒達をたくさん映して、ますます澄む鏡であってほしいと願う。

校内散歩25「相談室の衝立(ついたて)」

校内散歩25「相談室の衝立(ついたて)」 保健室の隣に相談室がある。テーブルと椅子、先生用のデスク、ソファセットがある結構広い部屋である。ここは担任と生徒の面談などにも用いられるが、主にスクールカウンセラーからカウンセリングを受ける時に使う。その時に活躍するのが、この衝立(ついたて)である。
 真女高の教室の入り口扉には、縦に細長いガラス窓がついている。それとなく中の様子を知るのに便利なのだが、カウンセリングの時には人に見られたくない生徒もいるだろう。だから、この衝立を広げて、さりげなく視線を遮るのである。
 そうすれば衝立のこちらで、安心して話を進められる。スクールカウンセラーや教育相談係の先生は、ゆっくり話を聞くことで、悩みのある生徒も心の中のもやもやをはき出して楽な気持ちで高校生活を過ごしていってほしいと願っている。カウンセリングの予約は、養護教諭の先生がいつでも受け付けてくれる。
 ☆なお、スクールカウンセラーは、保護者の方の相談も受け付けます。申し込みたい方は、養護教諭、または教育相談係まで電話をしてください。遠慮なくどうぞ。☆

校内散歩24「真女高の朝市」

校内散歩24「真女高の朝市」 「高校時代の一番の楽しみは、購買部のおばちゃんとのおしゃべりだった」と、ある男子校出身者が話していたが、女子校である本校でも、やはり購買部は生徒達の「楽しみ」の一つになっていたのではないかと思う。ただ、様々な事情により県内の多くの学校と同様に、数年前に購買部は廃止された。
 現在は飲み物が自動販売機で購入できるほか、昼休みに西昇降口で、パン、コロッケなどの総菜、弁当類の販売が行われている。この販売を担当して下さる方々は、皆さん陽気で元気がいい。長い方では30年も本校に通い続けているそうだ。
「生徒も変わったよ。今は先輩後輩の区別もあんまりないけど、昔は、3年生が買うまでは、2年生や1年生は買わずに待っていたもんだよ。」
「今の子はちいっとしか食べないねえ。昔は4時間目が終わるとダダダッと走って来たよ。」
 部活動に備えてパンなどを購入しながらおしゃべりをするのどかな光景は、海辺の町で見かけた朝市のようである。だから、ここを「真女の朝市」と呼んでいるのだが、「朝市」の皆さんは、
「みんな、部活動や何かでよく頑張ってて、偉いよねえ。今日も頑張りな。」
と、生徒達のおなかと心の両方を応援してくださっている。

校内散歩22「一番暑い夏」

校内散歩22「一番暑い夏」 猛暑、いや酷暑であった。全国的にも「観測史上一番」の有り難くない記録が続出した夏だった。
 真岡も暑かった。本校は教室棟が3階建て、管理棟は4階建ての構造だが、4階にある研究室では、「机の表面温度が35度以上あるんですよ。測ってみて、ぞっとしました。」などという日が続いた。
  しかし、教室等の方は、平成20年度にPTAのご尽力でクーラーが入っているので、まずまず勉強に集中できる環境だったかと思う。3年生のある生徒などは「私達が入学した時にクーラーが入ったんですよ。本当にラッキーだった!」と述べていた。教室は28度に設定されており、大して低い温度にしているわけではないのだが、授業を終えて廊下に出ると、温泉に浸かったような感じがするほどで、その温度差に驚いたものだ。
 ただし。この快適な環境のために、保護者の皆さんが少なくはない冷房費を払って下さっていることも忘れないようにしよう。時々、特別教室に移動して生徒は誰もいないのに、普通教室がひっそりと冷えていることがあるが、こんな無駄はしてはいけない。
 ともかく、白いクーラーがやたらと頼もしく見えた過酷な夏だった。夏を乗り切った生徒諸君に、学力の実りの秋が来ることを期待する。

校内散歩23「ほほえみ」の桜

ほほえみの桜 ちょっとロマンチックな話題を一つ。
 本校の欅の大木も有名だが、真岡駅を隔てて建つ栃木県立真岡高校も欅で有名である。校内には古木が何本も聳え立っている。その東端の、つまり真女高に一番近い一本には「あこがれ」という銘がある(そうだ)。一体誰が名付けたのだろうか。
 この芳賀地区は、全体に慎み深い気質で、真岡鐵道の電車でさえ、今なお「男子高校生用」「女子高校生用」と自然と車両が分かれてしまう土地柄である。まして、男女七歳ニシテ席ヲ同ジウセズの昔は、男女の仲もなかなか遠かったのではなかろうか。そんな時代に、女子校の空に一番近い欅に「あこがれ」と名付けた少年がいた、と想像すると何ともほほえましい。
 本校の欅には、残念ながらそれに応える銘はないのだが、西門近くの、「あこがれ」に向かい合うように立つ桜に、密かに「ほほえみ」と名付けてみた。静かにほほえむような花を、この桜は百周年を迎える来春にも咲かせることだろう。

校内散歩21「丸椅子」

校内散歩21「丸椅子」 真女高に赴任して、職員室でまず目についたのが、10脚以上もある丸椅子であった。一体何に使うのだろうと思ったが、謎はすぐに解けた。質問や相談などのために来る生徒を、先生方の横に座らせるための椅子なのである。
 「おう、質問か。まあ、座れや。」と言われて丸椅子に座れば、生徒と先生の目線の高さは同じになる。そして、机の上に広げた問題を共に覗きこみつつ、じっくり教えてもらう。疑問が解けたら、少し雑談もして、丸椅子から立ち上がる。先生が「また、おいで。」と言ってくれる。
 これは、生徒に取っても先生に取っても、とても貴重な時間である。
 また、年間行事に組み込まれている生徒個人面談は、ほかの人の耳に入らないよう別室で行うが、それ以外の、ちょっとした面談に、この丸椅子を使うこともある。あまり構えずに話をするのにちょうど良い。
 この椅子が職員室にたくさんある限り、そして常に生徒が座っている限り、真女高は大丈夫だ。…そんな気がする。

校内散歩20 「芝生」

校内散歩20「芝生」 真岡女子高校の華、といえば集団演舞「『荒城の月』幻想」であろう。
 このHPでもたびたび紹介しているが、生徒達は演舞の完成に向け半年以上も精進する。指導する先生方も汗だくで走り回り、声を枯らして指示される。本校を訪れるOBの皆さんは、よく「『荒城の月』を今も演じていますか? 私はまだ、演舞に使った舞扇を持っていますよ。」などとおっしゃる。それだけ、忘れがたい時間を過ごしたということなのだろう。
 その晴れ舞台となるのは校庭の芝生である。今年、同窓会の皆様のご協力で新たに購入した芝刈り機を用いて、公仕さんが芝を刈ってくださった。演舞する生徒の足が引っかからないように、隊列がびしっと一線に並べるようにと心をこめて念入りに。
 当日は天候にも恵まれ、例年通り見事な「『荒城の月』幻想」が上演できた。バスを仕立てて見に来て下さった同窓会東京支部の皆様にも、保護者や近隣の皆様にも喜んでいただけたことと思う。
 見事舞い切った後で感動の涙を流した生徒諸姉よ、自己の精進を自負せよ。同時に、成功を支えてくれた人々のことも忘れないで欲しい。桜が丘祭は終わっても、猛暑の中で、公仕さんの芝刈りはまだまだ続いていることも。