校長室便り

校長室(自宅)便り⑧

身近な風景 ~ ナガミヒナゲシ

5月になった頃から、気になる植物がありました(下の写真、5月20日撮影)。
道端には至る所で、オレンジ色の可愛らしい花が咲いているのですが、名前がわかりません。以前はあまり見たことがありませんでした。佐高にある「校庭の雑草図鑑」で調べてみても載っていません。おそらく、外来種で最近、分布を広げてきたのではないかと思い、インターネットで、「最近見かける花」などのキーワードで検索したところ、ようやくヒットしました。それが、「ナガミヒナゲシ」でした。

ウィキペディア等で調べてみると、園芸種である「ポピー(ヒナゲシ)」と同じケシの仲間で、ヒナゲシに比べて、果実(実)が細長いことから、「ナガミヒナゲシ」という名前が付けられたということがわかりました。ケシというとアヘンの原料になる危険な植物ですが、ヒナゲシと同様に、アヘンの原料となるアルカロイドは含まれていないそうです。

日本では帰化植物としてすでに自生していますが、日本で最初に発見されたのは、1961年、東京都世田谷区だそうです。おそらく、輸入された作物にその種子が付着して日本に入ってきたと推測されていますが、2000年以降には、全国に爆発的に広がっています。繁殖力が非常に強いことから、2016年以降、埼玉県、千葉県、神奈川県、京都府、東京都、茨城県、新潟県、群馬県、そして栃木県等に位置する複数の自治体では、住民に対し、「特定外来生物や要注意外来生物には指定されていないものの、これらと同様に生態系に大きな影響を与える外来植物」として、ナガミヒナゲシの危険性を周知するとともに、駆除の協力を呼びかけるにいたっています。(以上、ウィキペディア「ナガミヒナゲシ」に記載されている内容を参考に転載しました。)


ところで、ナガミヒナゲシは、本当に大繁殖しているのでしょうか、また、駆除が必要なほどの悪影響があるのでしょうか?

本校では、中高でそれぞれ課題研究など、探究的な学習を行っていますが、上記の疑問は、課題研究のテーマになりうるものではないかと考えました。
そこで、私も「ナガミヒナゲシ」について、課題研究をしてみました。課題研究の事例として紹介します。


(1)リサーチクエスチョンの設定
→ナガミヒナゲシは、駆除が必要なほど、生態系へ悪影響を与えているのか。

(2)仮説
→どんな場所で繁殖しているかを解明すれば、生態系への影響の有無を推測できる。

(3)研究方法
→佐野市内の繁殖状況を明らかにするため、「ナガミヒナゲシ」マップを作製する。
 ・平日は徒歩で通勤したり、土日は散歩をしたりする際に、道路上に繁殖しているナガミヒナゲシをスマホで撮影する。
 ・写真には位置情報が記録されているので、それをもとに、地図上にマッピングする。


(4)結果


「ナガミヒナゲシ」マップ(赤い点がナガミヒナゲシの繁殖を確認し写真を撮った地点)

→・調査した地域では、ほぼ全域でナガミヒナゲシの繁殖を確認した。
   (予想以上に繁殖していた)
 ・車の通りの激しい道路で、路側帯に植物を植栽している場所では大集団で繁殖していた。


(花は枯れていて実が出来ている)

 ・車の通りがあまりない住宅地の路地では、一株単位で繁殖しているものもあった。



  ・農地や農道では、あまり繁殖していない。

(4)考察
→2000年以降、全国に急速に分布を広げている、という文献情報のとおり、佐野市内全域で繁殖しているのが確認できた。特に、車の通りが激しく、土壌があるところでは、大集団となっており、車のタイヤに種子がくっついて分布を広げている可能性が示唆された。一つの実(果実)からは、多数の種子が作られるため、その繁殖力は非常に大きいと考えられる。


(一つの果実で作られる種子は約1600あった)

→現状では、すでに駆除できるレベルを超えているような状況である(と感じた)。
 しかし、そもそも、本種を駆除する必要性がある(=何らかの悪影響がある)かどうかについては、今回の調査からは判断できなかった。
 各自治体で駆除を奨励しているケースも多いが、どういった根拠に基づくものなのかは不明である。

→まだ、農地や農道には、ほとんど入り込んでいないが、今後、さらに時間がたつと進出してくる可能性はある。その際は、何らかの対策が必要となる可能性もある。


(5)今後の課題
→ナガミヒナゲシの花自体は可愛らしく印象的である。繁殖力が旺盛であることが駆除の理由になるのかどうかの追究が必要ではないか。「外来種=悪」という考え方を見直すきっかけになるかもしれない。市民の意識調査(嫌悪感等があるかどうか)なども有効かもしれない。
→各自治体がどのような事態を想定して駆除を推奨しているのか、聞き取り調査を実施したい。
→(ローカルな問題でありながら、グローバルな視点も必要である。)


*もし自分が研究するとしたら、結構面白いテーマになるのではないかと思いました。
*なにこれ?と疑問を持つことと、HP等に書いてあることをうのみにしないことが大切です。まさにクリシン(クリティカル・シンキング)が生きてきます。

レッツ、クリシン!