校長室便り

校長室(自宅)便り⑦

身近な風景 ~ ヒキガエルの産卵から上陸まで

先週の「身近な風景」(その後)では、栃木市の「出流ふれあいの森」でのヒキガエルの上陸(Xデー)を紹介しました。しかし、これは予想外の伏兵でしたので、今回は、私のフィールド(栃木市岩舟町小野寺)での「ヒキガエルの産卵から上陸まで」を紹介します。なお、観察は毎週土曜か日曜に、散歩を兼ねて行っていました。

①4月4日(土):
ため池では、ヒキガエルの成体の鳴き声が聞こえていました。池にはすでにかなりの量の卵紐がありました。この日は、私以外にもヒキガエルの観察に来ていたことが後からわかりました。その方(逆井重男氏)が撮った「ヒキガエルの成体が包摂しながら移動している素晴らしい写真を後日いただきましたので紹介します。下が雌で上に乗っている個体が雄です。


(逆井重男氏撮影)



②4月12日(日):産卵から約1週間後です。寒天状の卵の紐から幼生が孵化していました。黒っぽく見えるのが全部、孵化直後の幼生です。まだ泳ぐことはできません。


③4月19日(日):産卵から約2週間後です。孵化してから1週間がたち、少し泳げるようになってきました。岸に沿って、幼生同士が固まっています。


④4月25日(土):産卵から約3週間後、孵化から約2週間がたちました。泳ぎもだいぶうまくなっています。一か所に固まらずに、一匹一匹が自由にひらひら泳いでいます。


⑤5月10日(日):産卵から約5週間後、孵化から約4週間がたちました。幼生の大きさが一回り大きくなったようです。


⑥5月17日(日):産卵から約6週間後、孵化から約5週間がたちました。幼生には手足、というより、四肢(前肢、後肢)が生えていました。しっぽはまだ残っていました。いよいよ変態し、上陸も近いことがわかります。


⑦5月23日(土):とうとうヒキガエルの変態、上陸です。まさにXデーです。4月4日の産卵から、約7週間がたちました。
子ガエルは先を争って岸に近づき、上陸しています。上へ上へと移動しています。しかし、よく見ると、池にはまだしっぽが残っている変態途中の個体もたくさんいました。どうやら、Xデーは、ある一日というピンポイントではなく、おそらく数日間にわたっているのでしょう。


写真
の黒い粒粒が全部、ヒキガエルの幼体です。ものすごい数です。


子ガエルは泳ぎは上手です。水中をすいすい進んでいきます。


左側の水中には、まだ尾が残っている幼生がいます。右側の陸上には変態した子ガエルがいます。このように、いろいろな成長段階のヒキガエルがいるということは、どのような理由が考えられますか。さあ、考えてみましょう。
→仮説を立て、それを証明するにはどうしたらよいでしょうか。



10円玉の大きさと比べてみると、子ガエルの小ささがわかると思います。
とにかく、一匹一匹が吸い寄せられるように、歩いて上を目指しています。
後肢がまだしっかりしていないので、飛び跳ねることはあまり得意ではないようです。


こうして上陸を果たしても、生き残ることが出来るのは、ほんの数匹しかいないのが厳しい現実です。ほとんどは、森にたどり着く前に力尽きたり、乾燥して地面に貼りついてしまったり、他の動物に食べられてしまったりするのではないでしょうか。
そう考えると、数年かけて成体になり、再び、産卵に来ることが出来る個体は、本当に奇跡のような存在です。
皆さんが生を受け、今このHPを読んでいるのと同じくらい奇跡的なことなのかもしれません。

しかし、一匹でも多くの子ガエルが、再び、この池に戻ってきてくれることを祈らずにはいられません。