2024年6月の記事一覧

小高生へ(7)

「努力は必ず報われる」

(広澤選手からのメッセージ)

 「校長室より」のページから、生徒の皆さんへメッセージを送っていきたいと思っています。感想や要望がありましたら、気軽に声をかけてください。

 「努力は必ず報われるか?」と問いかけられたら、どう答えますか? 「必ず報われるはず!」と確信をもって答えられますか? 「報われる場合も、報われない場合もある・・・」と曖昧に答えますか? 私はかつて担任していた生徒の一人から、「努力は才能を超えますよね?」と訊かれて、明確な答えを返せなかったことがあります。
 ここで、皆さんの先輩(小山高校OB)の野球選手について述べたいと思います。昭和55年度の本校卒業生、元プロ野球選手の広澤克実さんです。広澤さんは、小山高校・明治大学の野球部で活躍した後、昭和59年ドラフト1位でヤクルトスワローズに入団、以後、読売ジャイアンツ、阪神タイガースで中心打者としてプレーし、打点王2回、最多勝利打点2回などのタイトルをとった素晴らしい名選手です。この広澤さんが、平成28年に母校である小山高校に講演に来てお話しくださったことが、『小山高百年誌』に掲載されています。
 現役を引退された平成15年、当時、阪神タイガースにいた広澤さんは、福岡ダイエーホークスと対戦した日本シリーズで(広澤さんはこれで引退することを決意されていたそうです)、打者として打席に立ち、ボールを打とうとしても、どういうわけか「バットを握った手が止まってしまう」、「体が動かない」という不調に陥ってしまいます。試合が終わった後、どうにもならない情けなさで2時間も自分の部屋で泣いてしまったということも、講演の中で話されています。チームとしては3勝3敗で迎えた日本シリーズ7戦目、9回ツーアウトという場面で、広澤さんは代打として現役最後の打席に立ちます。1球目は敵の22歳新人ピッチャーの速球に圧倒されながらも、2球目になって急にボールが見えるようになり、景色がバーっと変わり、自分が本来の調子に戻ったことを確信したといいます。3球目のボール玉も「止まった」ように見えたことで、「絶対打てる!」と自信を持ち、4球目のストレートで見事ホームランを放つのです。現役としての最終打席を本塁打で飾った時の広澤さんの思いは、「自分で打ったのではなく、誰かに打たせてもらった。野球の神様、ありがとう。」という感謝の思いだったと、生徒たちに話してくださっています。そして、「努力は必ず報われる。高校時代に一生懸命努力したことが、いつ満期なるかわからない銀行預金みたいに、今すぐには満期にならなくても、次のステージにいったときに、その努力が満期になって下りてくる人もいる。いつ満期になるかは、神のみぞ知るかもしれないが、必ず努力は報われる。」と力強いメッセージを、生徒たちに贈ってくれています。
 広澤さんのこの言葉は、後輩たちへのこの上ない激励の言葉です。こういう立派な先輩をもつ小山高校の生徒たちは、本当に幸せだと思います。広澤さんをはじめとする先輩方の素晴らしい生き様・人生を、今、小山高校に通う生徒たちも受け継いで、幸せで充実した時間を過ごしてほしいと願っています。努力は必ず報われる‼ 頑張れ、小高生‼

小高生へ(6)

「事実 → 解釈 → 感情 → 行動」
「微笑み」の魔法

 「校長室より」のページから、生徒の皆さんへメッセージを送っていきたいと思っています。感想や要望がありましたら、気軽に声をかけてください。

 私たちは、日々の生活の中で多くの出来事に出会います。人生とは、数え切れない出来事(事実)の集積とも思えます。でも、「人生=事実の積み重ね」なのでしょうか。人間は、様々な文学や哲学を生み出してきました。それらは、言わば「人生の解釈」とも言うべきものです。私たちの人生は、事実だけではなく、事実をどうとらえるかという「解釈」も重要な構成要素になっていると考えられます。
 わかりやすい例で言うと、水筒を持っていたとして、水筒の中身が残り半分になった時、「もう半分になってしまった」ととらえるか、「まだ半分もある」ととらえるかは、その人の「解釈」です。同じ事実に対して、プラスにとらえることも、マイナスにとらえることも、どちらの「解釈」も可能ですが、プラス(前向き)にとらえることで「感情」が変わってきます。
 これは、私が出会ったある生徒の話です。その生徒は野球部員でポジションはキャッチャーでしたが、「一発逆転されるかもしれない」というピンチの時はどんな気持ちなのかを尋ねたところ、「面白いぜ! 絶対負けるもんか!」という気持ちだという答えが返ってきました。私は「なるほどなあ」と感心しました。逆転されるかもしれない状況(事実)を「面白い」とプラスにとらえ(解釈)、「負けるもんか」という勝負への意欲(感情エネルギー)を引き出す流れ、このような思考と感情の流れが、観る人をワクワクさせるプレー(行動)につながるのだということが印象的に納得されました。
 毎日の生活も、単純に楽しいことばかりではありません。うまくいかないことや自身の思いにかなわないことの方が多いかもしれません。そうしたことをあえてポジティブにとらえてみると、きっと何かが変わります。何らかの「事実」があり、私たちはそれを「解釈」します。マイナスに解釈すれば、どうにもならないと思われることも、プラスにとらえると次なる飛躍へのステップになります。前向きな「解釈」は、前向きな「感情」(意欲)を引き出します。そして、「感情」が変われば、「行動」が変わります。
 「微笑み」の魔法があるそうです(ある先生から聞いた話)。試験の時、問題を開く前に「これは私を合格させてくれる問題だ」と思いながら(解釈)、問題に向かって微笑んでから解くようにすると実力が発揮できるという話です。前向きな解釈と、微笑むことによるリラックス(感情)が、落ち着いて問題を解くこと(行動)につながるということですね。「必勝」ならぬ「必笑」をスローガンとする、甲子園常連の高校野球部の話も聞いたことがあります。選手たちは、「笑う」ことでポジティブなイメージがわいてきて、落ち着いて前向きに戦えるのだそうです。いつもニコニコ笑っている人がいると、雰囲気が楽しくなります。楽しいと、心身をリラックスさせることができます。きっとその方が「うまくいく」のだと思います。「微笑み」の魔法を、いろいろな場面で使ってみてください。魔法の成果を報告してもらえるとうれしいです。