校長室より

小高生へ(2)

ピンチはチャンス!! 負けるな、小高生

 ホームページの「校長室より」のページから、生徒の皆さんへメッセージを送っていきたいと思っています。感想や要望がありましたら、気軽に声をかけてください。

 私たちが生活していく中で、「困ったなあ」というピンチに出会うことは避けがたいかもしれません。できることならピンチにはぶつかりたくないというのが正直な思いかもしれませんが、同時に「ピンチはチャンス」というのも正しいかもしれないと思います。
 「ピンチはピンチでしょ」と突っ込みたくなる人もいるでしょうが、歴史を振り返れば「ピンチ」を「チャンス」に変えて成功した事例は、数多く見られます。むしろ「チャンス=チャンス」の成功例よりも、「ピンチ→チャンス」の成功例の方が多いかもしれません(そういう事例はドラマチックだから取り上げられやすいという面もありますが)。成功者の多くは、才能に恵まれると同時に、幾多の困難を乗り越えてきた人たちです。才能があるだけで(困難を克服する努力なしに)成功した人は、いないのではないでしょうか。
 有名な映画俳優(同時に、映画監督、脚本家、映画プロデューサー、作曲家)であるチャップリンの幼年時代は、チャンスどころかピンチだらけでした。両親は舞台人でしたが、父はアルコール依存症で、母は心の病を抱えていました。やがて両親は離婚し、子を引き取った母は病気で入院し、幼いチャップリンは救貧院で生活したりしていました。生きていくために、チャップリンは食品雑貨店のお使い、診療所の受付、豪邸のボーイ、ガラス工場や印刷所の工員など様々な仕事をします。チャップリンの映画には、貧しい労働者、心優しきホームレス、傲慢な金持ちなどが登場し、ユーモア(笑い)とペーソス(涙)が交錯する人生のドラマが描かれますが、これは幼年時代の波乱多き経験があってこそ可能だったと思われます。ピンチだらけの幼年時代が、チャップリンの名作映画を生み出す源泉となったのです。(チャップリンの映画は、絶対観る価値があります。お勧めは、『ライムライト』、『街の灯』、『モダンタイムス』、『独裁者』、『殺人狂時代』など多数。漫画家の手塚治虫は、チャップリンの映画には「全てがある」と言っています。)
 私たちは、しばしば「思い込み」にとらわれます。「もうだめだ!」とか「絶対無理!」とかいうように。しかし、自分ではそう思っても、他の人から見たり、客観的に見たりしたら、「そんなことはないよ。」ということがあるかもしれません。私たちの生活は、事実と、その事実をどう受け止めるかという意識(思い込み)によって成立しているのではないでしょうか。同じ事実に向き合っても、「ピンチだ。もうだめだ!」と思ってしまう人と、「何とかなる。これはチャンスだ!」と思う人がいるとしたら、道が拓けやすいのは後者だろうと想像できます。誰かから注意を受けた場合に、「うるさいなあ。どうせ自分はできないよ。」と考えるのと、「アドバイスをもらった。ありがたい。」と考えるのとでは、その後の結果がきっと変わってくるはずです。
 「苦労なんかしたくない」、「ピンチになんかなりたくない」と誰でも思っているかもしれませんが、ピンチのない人生なんてこの世にないんじゃないでしょうか。スポーツの醍醐味のひとつは、いかにピンチを乗り越えるかにあると思います。人生の醍醐味も同じかもしれません。ある程度の年月を経て懐かしく思い出すのは、苦労を乗り越えたことだったりします。もしかしたら、苦労を乗り越えるって、「人生最高の楽しみ」なのかもしれません。悩みや苦労が全くない人よりも、「人生いろいろ」で苦労や苦難がありながらも、自分自身を大切にして朗らかに生活し、自分以外の人にも親切に接して、互いを尊重し合える人の方が、魅力的ではないでしょうか。苦労やピンチは私たちにとって成長のチャンスであり、苦労やピンチを乗り越えることはこの上ない喜びであり、苦労やピンチこそが人間性を高め、その人の「人としての陰影」を深めてくれるのだと思います。
 ピンチは飛躍へのチャンス。ピンチに負けるな、小高生! いつも応援しています。