校長室より

小高生へ(15)

「バナナ」を探せ!!

~創立記念講演会 山本潤様のお話

 「校長室より」のページから、生徒の皆さんへメッセージを送っていきたいと思っています。感想や要望がありましたら、気軽に声をかけてください。

 11月8日(金)、本校106周年の創立記念式に併せて、日本航空パイロットの山本潤様を講師として創立記念講演会が行われました。「Soraの魅力とアクティブラーニング~未来は可能性に満ちている」という演題で、パイロットとしての業務やリスク管理についてのお話をいただきました。
 まず、旅客機のパイロットには、飛行機に乗り込んで操縦を始める出発前の段階にも多くの業務があるということでした。具体的には、飛行機の整備状況、気候、乗客の情報について確認し、整備士や客室乗務員と打ち合わせし、飛行機の外部の点検まで行うとのことです。山本様のこのお話を聞いて、私はオーケストラの指揮者を思い浮かべました。子どもの頃、私は指揮者が何のために存在するのか理解できませんでした。指揮者自身はひとつの音を発することもなく、ただ踊っているようにしか見えなかったのです。後になって、本番の演奏会の前に多くの時間を費やしてリハーサルを行い、指揮者が自らの表現意図をオーケストラに伝え、オーケストラとともに演奏を作り上げていくことを知ったのです。パイロットという職業も、操縦席に座る前に、乗客の安全を確保し快適な旅を提供するために、多数のスタッフたちと協力しながら綿密な準備をすることを知って、颯爽として華やかに見える裏側で「隠れた努力」が常にあることに強い感銘を受けました。飛行機を操縦するだけでなく、乗客の旅が素晴らしいものとなるようにフライト全体をプロデュースするという意味で、パイロットの業務は指揮者の仕事に通じるところがあると思います。
 また、山本様は飛行機の操縦にはリスクが多くあることを述べ、アクティブラーニング(主体的、能動的な学び)の重要性についてお話しされました。道を歩いていてバナナの皮があったら、足を滑らせ、転ぶかもしれない。そうならないためには、「バナナ」を前もって発見することが重要であり、対策のカードをできるだけ多く準備することでリスクは避けられる。「バナナ」(リスク)を見つけて、手持ちのカード(対策)を準備することがアクティブラーニングだというお話でした。私たちの日々の生活(人生)にも、リスクは存在します。人生に「絶対的なマニュアル」はありません。私たちは、目の前のリスクに対して、手探りで立ち向かい、「自らの答え」を探し出さなければなりません。自らの知識と経験、他者からのアドバイス等を総動員して、ゴールを目指すのです。100%の普遍的な正解はなく、目前の状況を見極めながら、柔軟な思考をもって臨機応変に対応することで着地点が見えてきます。
 皆さんは「リスクがあるのであれば、道を歩かなければいい」と考えますか。しかし、リスクを恐れてばかりでは、何もできないのではないでしょうか。リスクのない世界は、どこにも存在しません。リスクがあることを怖がるのでなく、「バナナ」(リスク)を見つけて、カード(対策)を準備し、実行すればいいのです。最初のカードが通用しなければ、次のカードを出す。リスクを解除できるまで、カードを出し続ければいいのです。そうしてゴールにたどり着いたら、それは達成であり成功と言えるのではないでしょうか。
 「印象的な風景はありましたか?」という生徒からの質問に対して山本様は、海と見まごうような広大なアマゾン川に、月の光が反映する様子を見た時のことを話されました。たとえリスクがあっても、誠実な努力を重ね、何かに精一杯取り組み続けて、困難に負けずに頑張っていたら、きっと美しい風景が見られると思います。生きることは、リスクを恐れずに冒険することです。時に失敗することがあったとしても、カードを出し続ければ、ゴールは見えてきます。そのゴールは、想像を超えた絶景かもしれません。山本様、素晴らしいお話をありがとうございました。
 頑張れ、小高生!! いつも応援しています。