校長室より

小高生へ(12)

今、この瞬間を楽しみ、思い出を胸に刻もう!!

 「校長室より」のページから、生徒の皆さんへメッセージを送っていきたいと思っています。感想や要望がありましたら、気軽に声をかけてください。

 先日(8月31日)、本校の学校祭である「聡輝祭」が開催されました。数日前には台風の接近が懸念され、一時は予定通りできるか心配でしたが、当日は多くの方が来場し、楽しんでいただけたことを大変うれしく思います。
 さて皆さんは、私が聡輝祭オープニング・セレモニーの中で述べた生徒たちへのメッセージを覚えているでしょうか。「今、この瞬間を楽しみ、思い出を胸に刻もう!!」です。

 高校時代は一度きりのものであり、青春時代も限りあるものです。今日という日も、二度と戻ってきません。(だから、楽しむ時には、思う存分楽しんでほしいと考え、上記のメッセージを送りました。)
 私は高校時代、「年を取る」ということについて全く自分事として実感できていなかったと思います。自分が50代、60代になる時は永遠に来ないかのように感じていました。でも実際は、そういう時が間違いなくやってきます(若い高校生である皆さんにも!)。

 私が愛してやまない漫画に、『エースをねらえ!』(作者:山本鈴美香)という作品があります。主人公の「岡ひろみ」(「テニス王国」と呼ばれる県立西高等学校のテニス部に入り、夢中になってテニスに取り組む)に、テニス部コーチの「宗方 仁(むなかた じん)」(岡ひろみの才能を見出し、猛特訓する)が次のように語る場面があります。

 「この世のすべてに終わりがあって、人生にも試合にも終わりがあって、いつと知ることはできなくても、一日一日、一球一球、確実にその終わりに近づいている」
 「だから、燦(きら)めくような生命をこめて、本当に二度とないこの一球を精いっぱい打たねばならない」

 宗方コーチは、自身が選手であった時、テニスに心底打ち込み、優秀なプレーヤーであったにもかかわらず、突然の足の故障のために選手生命の終わりを迎えなければならなかった人物として描かれています。自らのつらい経験をふまえ、若い岡ひろみに、「自由に動けるうちに、自由に走れるうちに、悔いのないプレイをしておけ」と、テニスだけにとどまらない、「人生の忠告」とも言える教えを与えるのです。
 この言葉の意味を、若い皆さんはどれだけ実感をもって理解できるでしょうか。私たちは、何気ない日常を当たり前のものとして過ごしていますが、今日という日は二度となく、高校時代も確実に終わりに近づいていきます。その限りある大切な日々の意味を心に置いて、「燦めくような生命」をこめた時間を過ごしてほしいと、私は思います。
 時に「未来」や「将来」のために、「今」を捧げなければならない必要があることは確かです。部活動で大会に勝つためや、大学入試で合格を自分のものにするためには、ある程度は、というより、かなりの程度の努力、忍耐、我慢が求められます。ただ、その努力、忍耐、我慢は、一見地味で「泥臭い」ものに思えたとしても、後になって振り返ってみると、やはり「燦めくような生命」をこめた時間だったと気づく時がきっとあります。本当に好きだと思える「何か」、そして全力で取り組める「何か」を見つけられたならば、その「何か」のための努力には精いっぱいの「燦めくような生命」をこめることができるはずです。
 皆さんの「何か」は何ですか? 二度とない青春時代です。どうか「悔いのない」日々を過ごしてください。夢や希望を胸に抱き、困難に負けずに生きる意志をもち、自らの若いエネルギーを「打ち込める何か」に思い切りぶつけていってください。自分の存在を懸けて生きる「今」という瞬間を楽しみ、その思い出を胸に刻んでください。
 頑張れ、小高生!! いつも応援しています。