日誌

入学式 式辞

令和二年度 栃木県立宇都宮北高等学校 入学式 式辞

 新型コロナウイルス感染症の感染予防のため、保護者・来賓の方々に御臨席いただけなかったことは誠に残念ではありますが、ここに、令和二年度、栃木県立宇都宮北高等学校入学式を挙行できますことは、新入生はもとより私ども教職員にとりましても大きな喜びでございます。

 ただいま入学を許可いたしました三百二十一名の新入生の皆さん、入学おめでとう。
 私たち教職員一同は、心より皆さんを歓迎し、祝福いたします。
 また、この場に御同席いただくことはかないませんでしたが、保護者の皆様におかれましても、今日の日を迎えお喜びのことと存じます。心よりお祝い申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の報道に触れて、新入生の皆さんも、保護者の皆様も、不安を抱えて今日の日を迎えたことと思いますが、一方で本校への入学を心待ちにしていたことと思います。
 その思いは、私ども教職員も同じでございます。
 本校は今年秋に、創立40周年記念式典を挙行致します。その節目の年に入学する皆さんと一緒に宇都宮北高校の新たな歴史を作っていきたいと考えております。

 皆さんは、特色選抜を経て入学した人も、一般選抜を経て入学してきた人も、ともに宇都宮北高校への進学を希望して、今日この場にいます。保護者の薦め、先生の薦めがあったにしても、最終的には自らの意志によって本校を志願し受検したことには変わりありません。
 では、皆さんが本校を志望した理由は何だったのでしょうか。
 人それぞれではあるかと思いますが、本校に魅力を感じ、本校で学びたいと思ったからでしょう。
 そのように本校を希望し、高校生となった皆さんに、私から是非ともしてもらいたいことが三つあります。

 まず第一に、「哲学を持つ」ということです。それは、哲学を持たぬ科学者ほど恐ろしいものはないと考えるからです。この場合の科学とは、物理学や数学といった自然科学だけではなく、文学や歴史学といった人文科学、法律や経済といった社会科学も含みます。
 つまり、皆さん誰もが、将来的に何かしらの科学、即ち学問を専門とすることとなるわけですが、どの学問にとっても、哲学を持たずに取り組むことは恐ろしいことだと考えるからです。
 哲学というのは、「人間が生きるということはどういうことか」「自分はいかに生きるか」ということを考えることです。
 何かするにあたって、これは良いことなのか悪いことなのか、自分はどう行動したら良いのかの基準を持つことです。
 ですから哲学を持つということは容易なことではありません。
 哲学を持つためには、自分自身の体験だけでは十分ではありません。多くの人と接して様々な生き方・考え方に触れること。本を読み、先哲の優れた思想を学ぶこと、自分が直接体験することのできない世界にも、本の世界に自分を置いて間接的に体験し、考えることが必要です。
 したがって、皆さんには多くの人と接し、多くの本を読んでもらいたいと考えます。そして、哲学の世界、学問の世界に羽ばたいてほしいと願います。

 二つ目は、「学び」の質を変えるということです。即ち、「学習」から「学問」へと転換し、「知識」を「智恵」へと昇華してほしいということです。
 学習は、「学び習う」と書き、学んだことを繰り返し繰り返し練習・復習して身につけることで、知識の集積にあたります。
 これに対し、学問は、「学び問う」と書き、学んだことから疑問を持ち、探求して真理へ向かい、智恵へと高めることです。
 コロナウイルス感染拡大の混乱の中で改めて感じたのが、科学教育の充実と情報教育の充実です。日本ほど国民全体に教育が施されている国はないと言われていますが、報道される一連の騒動を見るかぎり、日本は決して教育先進国とは言えません。
 あまりにも多くの非科学的なデマや情報に踊らされ、混乱を自ら深刻化している姿は嘆かわしくも悲しくもあります。
 そこで皆さんには、本校で科学的な考え方と正しい情報の活用をしっかりと身につけてもらい、社会の中で率先した行動をとってもらいたいと思います。

 三つ目は、「友情を育む」ということです。私は、人は最終的には、「知によって動くものではなく、情によって動くものだ」と考えています。「知」とは「知識の知」です。この人について行った方が得だろうという状況判断によって動くことはもちろんあるでしょう。しかし、何か重大なことにあたって最後の最後に自分がどう動くかは、それまでに育まれた愛情や友情といったものだと思っています。高校時代に育んだ友情は一生ものであり、困難にぶつかった時の支えとなります。どうか、一生ものの友情を宇都宮北高校の三年間で育んでください。

 結びに、新入生の皆さんが、今日の感動を忘れることなく、自分たちの力で学校を一層活気あるものにしていくという意気込みをもって、勉学に部活動や各種特別活動に取り組み、学校生活が実り多く、輝くものとなることを心から期待して、式辞と致します。

 令和二年四月七日
 栃木県立宇都宮北高等学校長 笠原 紀昭