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校長室から

鉛筆 2学期始業式式辞

 皆さん、おはようございます。36日間の夏休みがおわり2学期が始まりました。

 今年の夏は例年以上に暑さが厳しく、記録的な猛暑が続きました。7月には北海道の北見市で39.0℃、8月5日には群馬県の伊勢崎市で過去最高となる41.8℃を記録するなど、全国的に本当に暑い夏でした。そんな中、勉強や部活動、さまざまなボランティア活動など、本当にご苦労様でした。学校が始まりますので、生活のリズムを整えて新たな気持ちで頑張っていきましょう。この暑さはまだ続きそうですので、明日からの桜花祭でも、各自熱中症予防に心がけてください。

 まずは、昨日の新聞で気になったニュースを二つ話します。

 一つ目は、「ゲーム依存」の話です。新聞記事によると、ゲーム依存の疑いがあると判定された県内高校生の割合は、17.3%。5、6人に1人の計算ですから、もしかすると本校にもいるのかもしれませんが、長時間のゲームは心身への悪影響を及ぼします。他県ではスマホの使用を2時間までとする条例ができたところもあるようですが、ゲーム依存症にならないように、自制しながら使うようにしてください。

 もう一つは、クマ出没のニュースです。クマの目撃情報が全国各地で相次いでいますが、さくら市でも目撃情報があったと報道がありました。8月26日午前3時頃、早乙女地内で、体長約1メートルのクマ1頭が目撃されたとのことです。通学で近くを通っている人は、十分注意してください。また、万が一クマを目撃した時には絶対に近づかず、すぐに警察に連絡するようにしてください。

 それでは、今日のメインの話、井村屋グループの代表取締役会長さんの講演を聞く機会がありましたので、そのことを少し話したいと思います。皆さんは井村屋という会社を知っていますか。あずきバー、肉まん・あんまんなどがあり、主力商品のあずきバーは年間3億本も売れているそうです。会長の中島伸子さんは、アルバイトから初の女性社長、そして会長へと抜擢された異色の経歴を持つ方で、これまでの壮絶な人生について話を聞いてきました。

 1972年、中島さんは19歳のときに、福井県で起きた列車火災事故に巻き込まれました。700人以上の死傷者が出た大きな事故ですが、中島さんはその生存者の一人です。列車火災の中で、向かい側に座っていた3人の子どもを連れた母親から「この子だけでも逃して」と託され、5歳の子を連れて逃げようとしましたが、自分自身も煙に巻かれて意識を失い、母子4人とも亡くなったことを後に知らされます。中島さんは火災の影響で喉を傷め、声が出なくなり、それまで教員になる夢をもっていましたが、諦めざるを得なくなりました。そんな絶望の中、父親から手紙が届きました。そこには「『辛』という字に一本足せば『幸』になる。君だけの“プラス1”を探しなさい」と書かれており、それが彼女の人生の支えとなったそうです。

 その後、結婚して、福井営業所で経理事務のアルバイトとして井村屋に入社。アルバイトながら、お客様の声を改善提案として提出したり、自分が作った標語が会社に採用されたりしました。正社員になることを勧められても、声が出るようになったら教員になりたいという思いがまだあったので、断っていたそうですが、次第に誠実な社風に惹かれていき、正社員となることを決意します。正社員になってからも大変なことがたくさんあり、当時は女性ではまだあまりいなかったトラック運転手をしたり、営業職をしていたときには「女のセールスマンなんて」と言われ、まともに取り合ってもらえないこともあったと話していました。それでも負けずに、謙虚さと粘り強さで信頼を築き、支店長になり、副社長、そして社長に就任。70歳を超えた現在も代表取締役会長として活躍し、女性の待遇改善に取り組んでいるとのことでした。

 印象的だった言葉に「自分の人生のハンドルは自分しか握れない」というものがあります。これは、困難な状況に直面した時でも、自らの意思と行動で道を切り拓いていくことが大切だという意味です。さらに、「人生において大きな壁にぶつかったときには、その壁に扉の絵を描き、その扉の鍵は自分自身が持っている、自分の心の中から鍵を引き出して、扉を開けていく力強さがあれば、どんな困難にも立ち向かえる」とも語っていました。

 90分の話のほんの一部だけなので伝わったかどうか分かりませんが、端から見ると、順風満帆に見えても、知らないところでいろんな辛い思いや苦労をされていて、それを乗り越えて今があるんだなと感じた講演でした。

 皆さんも、思わぬことが起きたり、進路のことや人間関係などで悩んだりすることがあると思いますが、悩むというのは一生懸命考えているということだと思うので、決して悪いことではありません。「自分の人生のハンドルは自分しか握れない」という中島さんの言葉どおり、自分で進む道を決め道を切り拓いていく、そんな強い力を身につけてほしいと思い、紹介させていただきました。

 さて、長い2学期が始まります。

 一人一人がさくら清修高校生としても自覚と誇りを持って、充実した学校生活を送ることを期待して式辞といたします。

 まずは、桜花祭頑張っていきましょう。