校長ブログ
【校長ブログ】創立40周年記念式典に寄せて
錦秋の候、木々の彩りがいよいよ深まり、澄み渡る空に晩秋の趣が漂うこの佳き日に、栃木県立小山西高等学校創立四十周年記念式典を、かくも盛大に挙行できますことは、誠に光栄にして、感慨無量の思いでございます。
ご臨席賜りました、栃木県教育委員会委員・板橋信之様、ならびに飯塚仁様をはじめとする歴代校長先生方、小山市内各高等学校の校長先生方、また福田賢一様をはじめとする歴代PTA役員の皆様、そして永きにわたり本校の教育活動を力強く支えてこられた教職員の皆様方に対し、心より深甚なる感謝の意を表する次第でございます。
昭和六十一年の創立以来、本校は「知性を磨き、徳行を積み、体力を練る」の校訓のもと、地域に根ざした教育を推進し、幾多の若者たちを社会へと送り出してまいりました。四十年という歳月は、決して平坦な道のりではありませんでしたが、地域の皆様の温かなご支援、歴代教職員の献身的な努力、そして何より、生徒一人ひとりの真摯な学びと成長の積み重ねによって、確かな歩みを刻んでまいりました。
この節目にあたり、私は唐代の高僧・雲門禅師の言葉「日々是好日」を改めて噛みしめております。どんな日もかけがえのない一日であり、そこに学びと気づきがある。教育とは、まさにこの言葉の通り、日々の営みの中にこそ、その本質が宿るものです。生徒たちが悩み、喜び、挑戦し、成長していく姿は、私たち教育者にとって何よりの励みであり、誇りでもあります。
また、江戸の俳人・松尾芭蕉が説いた「不易流行」の精神も、今の教育において極めて重要な指針となります。「不易」とは、時代が移ろうとも揺るがぬ教育の根幹、「流行」とは、時代の変化に応じて柔軟に対応する姿勢。本校はこの四十年、教育の本質を守りつつ、ICTの導入、探究学習の推進、地域との連携など、時代の要請に応える教育を実践してまいりました。
そして今、私たちはAI時代という新たな局面に立っています。情報の処理や分析はAIが担う時代に、人間に求められる力とは何か。それは、「問いを立てる力」「他者と協働する力」「自ら学び続ける力」であると私は考えます。AIが答えを導く時代だからこそ、何を問うべきか、どのように価値を創造するかを考える力が、より一層重要となるのです。
本校はこれからも、「不易流行」の精神を大切にしながら、生徒たちが未来を生き抜く力を育む教育を推進してまいります。地域とともに歩み、世界に目を向けながら、心豊かな人間の育成を目指してまいります。
さて、小山西高校の生徒諸君に、ぜひ心に留めておいてほしい言葉があります。それは、アメリカ先住民の言葉にある「この世界は先祖から譲り受けたものであると同時に、未来から借りているものである」という教えです。皆さんも感じているように、本校は、これまで四十年にわたり、諸先輩方が築いてくださった伝統の上に成り立っています。しかし同時に、小山西高校は、これから五十年後、百年後に入学してくる未来の後輩たちから、一時的に借り受けているものでもあるのです。
君たちの一つひとつの行動が、未来の後輩たちに大きな影響を与えます。どうか、学びに、部活動に、学校行事に、青春のすべてを注ぎ込み、真の文武両道を実践してください。そして、しっかりと未来の後輩たちに、誇りあるバトンを渡すこと。それが君たちの責務であることを、どうか忘れないでください。
結びに、ご臨席いただいた皆様、そしてこれまで本校を支えてくださったすべての方々に、改めて深く感謝申し上げます。今後とも、小山西高等学校への変わらぬご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げ、式辞とさせていただきます。
令和7年11月18日
栃木県立小山西高等学校 校長 佐山利晴
(下野新聞社使用許諾済)