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栃聾進路指導部
平成29年度 栃木県立聾学校特別支援連携協議会の実施について
5月23日(月)、栃木県障害福祉課や福祉施設関係などの方々をお招きし、「現場でのコミュニケーション方法等の課題について」、午後は、企業、行政関係などの方々をお招きし、ハローワークの方から「支援体制の構築について」の話題提供のあと、それぞれ話し合いを持ちました。
午前中には、栃木県障害福祉課の方から、国が進めているユニバーサル農業を栃木県でも工賃向上のために農業と福祉の連携を具体化して拡大する動きがあることの話をいただきました。
福祉施設関係の方からの問題点として次の点が挙げられました。
① 手話のできる職員の不足による聴覚障害者とのコミュニケーションの難しさ
② 聴覚障害者の気持ちの伝わらなさや友人関係での思い悩んでいたりする事例
③ 気をひきたい行動など
これらに対し、本校からは、次のようなアドバイスを行いました。
① 見通しの大切さ、特に視覚的支援を使っての生活の見通しの必要性
② 行動の無視、プラス行動の時にほめる
午後は、ハローワークの方からの話題提供のあと、企業の方より次の質問がありました。
① コミュニケーション面でマスク使用が必要な職場では口元が見えないといった問題
② 安全関係や地震対策など
これに対し、話し合いでは、他の企業から次のような回答が寄せられました。
① マスク使用の職場では、周囲の職員の手話の向上が必須であるが、現時点では携帯
できるホワイトボードを使っての筆談が多いこと
② 安全関係の問題では、閉じ込め対策として防犯ブザーの使用や携帯電話の使用許
可、ホイッスルの使用
当日は、お忙しい中、参加していただいた方々、大変ありがとうございました。多くのご意見をいただき今後の指導に活かしていきたいと考えております。
第1学期高等部産業現場等における実習
第1学期 高等部産業現場等における実習を行いました!
高等部では、社会に出て働くということの意義を知り、仕事をするときの態度等を学ぶために、校外の企業や福祉施設での実習を各学期1~2週間行っています。
今回は、3年生1名について、2週間、企業での実習を行いました。初めは緊張した様子が見られましたが、少しずつ、作業にも習熟し、しっかり取り組むことができました。また、仕事をする上では、作業の能力だけではなく、態度や周囲の方とのコミュニケーションも大切です。「挨拶、返事、報告、相談」について実践したり、休憩時間にも、社員の皆様とお話をしたりと、学校での授業時に学んだことを生かせるように、努力することができました。
会社でいただいた課題を学校に持ち帰り、改善やさらなる向上を目指して、日々の生活に取り組んでいきます。
1年生についても、2学期から実習が始まります。それに向けて、学習を頑張っていきましょう。
進路だより
卒業生の近況報告
私は、いすゞ自動車(株)栃木工場 パワートレイン製造第一部検査課に所属しております。
主な仕事内容は、製品検査に使用する測定具の校正業務です。0.1ミクロン単位の測定具の精度を測定・判定します。不良品を作らない・流さないための重要な仕事であり、大変なことが多いのですがその分やりがいを感じられます。
作業を行っているのが、恒温室とよばれる、常に室温が20°で管理された部屋です。そこには私を含め聾者が3人作業にあたっています。職場のその他の方々とは、筆談や簡単な口話でコミュ二ケーションを図っています。そのため、仕事をする際に私はいつもメモ帳を持ち歩いています。
耳が聞こえないと、できる仕事が限られると思われがちです。しかし、いざ働いてみると、耳が聞こえなくてはできない仕事はそれほど多くありません。逆に言えば、自分から積極的に動いていくことで、チャレンジの幅は広がっていくと思っています。
皆さんも将来のことで悩まれるかと思いますが、自分から動けば、きっと会社や周りの方々から、理解と協力をしていただけます。皆さん、頑張ってください。
卒業生より
聴覚障がいでも常にポジティブで!!
昭和60年度高等部卒 F.T
宇都宮市役所勤務
私は,宇都宮市役所に所属して,福祉関係の多種多様な事業に取り組んでいます。
仕事柄,外部と連絡をとることが多いですが,私は電話応対ができないので,代わりにFAXやメールを利用して対応しています。
職場では,同僚が指文字や簡単な手話を覚えてくれて,ほとんど指文字で会話しています。やっぱり,同僚と仕事をする上でコミュニケーションは大事なので,自分から進んで筆談,指文字や手話を教えるなど,積極的に行動することが必要だと思います。
在学生の皆さんには,社会人になると障がいに関係なく一人前の大人として仕事することを求められますので,おどおどしないで,常にポジティブに頑張ってほしいと思います。
卒業生より
H7年度卒業 M.T
㈱本田技術研究所 四輪R&D センター
Hondaの四輪研究開発を担う会社に10年以上勤めています。
現在は中堅社員として世界中のHonda事業所に導入しているコンピューターシステムのグローバルサポート業務や新しいITシステム開発といったクリエイティブ思考を伴う業務に従事しています。
また、プログラム作成や英語メールでやり取りする機会もありますので、いつも自習を積み重ねながら取り組んでいます。
会社でのコミュニケーション方法を紹介したいと思います。
会社で標準導入されているソフトで、事前の準備がなくても誰とでもグループチャットができるメリットがあります。会議等に積極的に活用しています。
(2)タブレットや紙ベースでの筆談
マンツーマン(一対一)のコミュニケーションやパソコンが使えない場面では、タブレットの筆談系アプリや紙を使った従来ながらのアナログライクな筆談を活用することもあります。また、記録に残す必要があるかどうか内容に応じてツールや手段を使い分けることもあります。職場の飲み会や出張移動中は破損リスクが少ない軽量の電子メモパッドを活用する工夫もしています。
(3)会社支給携帯電話によるSNS/SMS(ショートメール)の活用
出張や外出先の職場から離れているところからの社内情報共有や連絡手段として
SNS/SMS(ショートメール)を活用しています。緊急時の電話(発着信)が必要な場面がある時は、周囲にいる同僚に代理電話をお願いできるようにしています。
職場の方の協力を得ながら、場面に応じてパソコンソフトや手段を柔軟に使い分けていますが、パソコンを使った仕事がほとんどの職場ですので、基本的にPC ノートテイクを中心に活用しています 。
このようにコミュニケーションツールや手段の特徴を上手に使い分けることで、コミュニケーションスタイルや情報共有の違いを乗り越え、職場の信頼やサポートを得ながら、自分のスキルアップやチャレンジ精神を持って取り組んでいます。また、自分ひとりではなくチームの一員として仕事に取り組むことや自らコミュニケーションツールの使い方を覚えて周りに伝授することで聴覚障害に対する認識を深めてもらうことも大切だと思います。
学ぶことは在学時だけではなく、社会に出てからはさらに重要になります。
自分の人生をどう生きていくかを考えていくことも大切です。世の中のあらゆる出来事、物事や思想に対しても客観的思考を自ら健全に育んで認識・形成していくことを前提に、各自が自助努力で出来ること、出来ないことを自ら気付き、そして、きちんと認識し整理できるようになって欲しいと思います。
それから、障害の有無に関わらず、同じ人間としてお互いの多様性を認め合える人間尊重はもちろんのこと、聴力の程度や失聴のタイミングの違いによって、多種多様な能力を持つろう者同士でもお互いを健全に受け入れ、受容性を高めることができる人になって欲しいと思います。
その上で、みなさん一人ひとりに合ったポジティブな方法で日本語やコミュニケーションの壁を上手に乗り越えて、人間関係や信頼関係を築いていくアクションを積み重ねていくのは、在学時も社会に出てからもとても重要だと心がけてください。
具体的な方法は人それぞれですが、多くの先輩が持っている技術・経験・知識、そして学校の先生方や地域・家族の身近な方のたくさんの教養にも自ら積極的に触れてください。そして客観的に耳(眼)を傾けて認識し、それを糧にし、自分自身の生き方を磨くことにつなげて欲しいと思います。
また、明日(未来)は自分の力で掴みとることにつなげられるよう、在学時からたくさんの知識や体験による習得、見聞や教養を積極的に広めて、分からないことがあっても分からないなりに一歩ずつ積み重ねていく努力や前向きな意欲・向上心を社会人になっても持ち続けてください。
そういった意欲や姿勢に対し、在学時は聾学校の先生方や家族の方が、社会人になってからは社会(地域)や職場の方が支援・協力を惜しまずに支えてくれるはずです。