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校長室から

令和5年度修業式式辞

早いもので、本日、令和5年度修業式になりました。新型コロナウイルス感染症が第5類に引き下げられたことにより、様々な制約が解かれ、皆さんが通常の高校生活を送れるようになった最初の年度の節目の日です。

以前と変わらず、適宜、換気をしたり手指消毒に努めるなど、感染症予防対策を講じ、さらには既存の学校生活の見直しをしながらではあったものの、一通り「さくら清修高校」ならではの学校行事や部活動、何より個の興味・関心、進路に応じた系列による学習、つまり総合学科ならではの授業に臨むことができ、全生徒の成長が随所に見られた1年間でした。

先程は皆さんを、卒業した先輩方は卒業式前日の表彰伝達式で称えたことでもわかるとおり、部活動、検定、模範篤行、皆勤など本当に各分野で素晴らしい成果を修めている生徒たちが多く、校長としても自慢です。

『さくら清修高校新聞』でも紹介しましたが、将棋界で前人未踏の全タイトルである8冠達成という偉業を達成した藤井聡太棋士は、AIを活用し棋譜の研究に励まれることもあると聞きました。社会の急速な情報化に伴う物事の分析力や処理能力、活用方法が問われる時代で、新たな課題も生まれているようです。学校も例外ではなく、皆さんには一人1台のタブレットが貸与され、調べ学習や視覚的な情報集約が瞬時にできるようになるなどの利便性が向上した反面、情報への適切な接し方に戸惑う等の負の面も感じているかも知れません。

こうした中、チャットGPT等のAIが、気づけば身近なものになり、世界中で取扱規定策定の賛否などについて、議論が沸き起こっています。特にEUでは、使用には制限が必要であるという意見が強く、商業主義が根強いアメリカとはやや異なる方向に進んでいるように聞いています。規制賛成派(慎重論者とも言えるでしょうか)の中には、いずれ人間がAI制御不能に陥り、人間社会がAIに統治されるようになるのではないか、と危惧する人もいるようですが、皆さんはどう考えますか?エビデンスを提示することはできませんが、私は、そうは思いませんし、そうであってはならないと考えます。なぜなら、AIと言えども人間が作り出したものだからです。私たち人間は、ものを創造する知恵に加え感情や理性があり、そして何より対話による協働ができるからです。情報リテラシーの獲得とともに、会話を超えた対話の意義を深く考えながら、理想の生き方・在り方を人との関わりをとおして模索してください。そうして変化の激しい社会を生き抜く素地を本校で培ってほしいと願います。

自然界の「さくら」も間もなく満開になります。卒業式の式辞でも述べたように、前庭の「御衣黄」が萌黄色の花を咲かせる頃には新たなクラスにも慣れ、活気に満ちながらも落ち着いた学校生活を送っている皆さんの姿を見るのが今から楽しみです。卒業生が残した実績を上回り佳き伝統の継承者となるべく、また、4月に迎える新入生の先輩としての自覚を持ち、様々なことへの準備期間である春休みを有意義に過ごすよう期待し、式辞とします。

令和5年度卒業式式辞

 柔らかな春の息吹の感じられるこの佳き日に、同窓会会長 和氣 久一様、PTA会長 飯村 秀文様をはじめとするご来賓のご臨席を賜り、栃木県立さくら清修高等学校 令和5年度卒業式をこのように盛大に挙行できますことは誠に光栄であり、大きな喜びとするところです。教職員一同、厚く御礼申し上げます。

 ただ今、卒業証書を授与した卒業生の皆さん、栄えある卒業、本当におめでとう。また、保護者等の皆様におかれましては、お子様の晴れの姿に感慨ひとしおのものがあるかと存じます。3年間の本校教育活動への深いご理解とご支援に改めて感謝申し上げるとともに、本日、お子様の卒業に当たって心よりお祝い申し上げます。誠におめでとうございます。

 卒業生は、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けて生活してきました。しかし、様々な制約のもと、不安や困難を克服し逞しく成長してきたのも皆さんです。最上級生となり今日まで、諸活動が漸く従来の形で行われるようになると、進路実現という目標に向かって努力を惜しまず、何事にも率先して取り組む様子や、後輩たちの面倒を見る姿が窺えました。この1年間は真に高校生らしく振る舞い、そして友人や後輩との友情と絆を強固にするなど、青春を謳歌しながら充実した日々を過ごせたものと思います。

 本校は、個の興味・関心、進路に応じた幅広い科目選択ができる総合学科であることと、生徒会活動、部活動、ボランティア活動と並んで学校行事が、生徒諸君にとって大きな魅力と特色になっています。卒業生の皆さん、クラスや部活動の仲間と知恵を出し合い運営や発表を行った「桜花祭」や「芸術合同発表会」のような文化的行事と、クラスが団結してプレーした「球技大会」や縦割りのチーム編制で挑んだ「体育祭」の体育的行事は、大いに盛り上がりましたね。それらいずれの場面でも、一人一人が主役として輝いており、これからも本校での佳き思い出として、脳裏に刻まれていくことでしょう。皆さんが築いた伝統は、必ずや在校生がさらに磨きをかけて紡いでいきますので、見守っていてください。

 さて、皆さんを待ち受けている社会は、少子高齢化や高度情報化が加速度を増して進んで行き、既存の仕組みや制度が著しい変貌を遂げようとしています。そうした時代を生き抜くためには、多様な価値観を受容し柔軟に振る舞う対応力、先見の明をもってイノベーションを起こす思考力と実践力、そして、他を敬い優れた人格を備えた人間力が、重要であると考えます。皆さんは、地域の方々のご支援や保護者等の皆様の愛情と庇護のもと、3年間の高校生活をとおして、社会で立派に生き抜く素地を培ってきたと確信しています。こうして今、このような素晴らしい卒業生を前に式辞を述べていることに、私は喜びと誇りを感じています。今後進む道は人それぞれですが、さらに磨きをかけてください。期待しています。

 ここで、元官僚で栃木県知事も務めた社会評論家・詩人の安積得也氏の『明日』という作品の一節を紹介します。「人に皆美しき種子あり/明日何が咲くか」。繰り返します。「人に皆美しき種子あり/明日何が咲くか」。「桜梅桃李」の如く、一人一人の良さや可能性の花は、似てはいても一つとして同じ形や色のものはなく、花開く時期も異なります。しかし、必ずや花開くのです。自分を信じて個性豊かに開花する日を楽しみにしていてください。

 自然界の「さくら」も間もなく満開となります。前庭の「御衣黄」が萌黄色の花を咲かせる頃には、新天地での生活にも慣れ、活気に満ちながらも落ち着いた生活を送っていることと思います。卒業生の皆さんのこれからの人生に幸多かれと祈り、式辞といたします。

令和5年度入学式式辞

 百花繚乱。色とりどりの花々が咲き乱れる季節となりました。ただいま入学を許可いたしました新入生の皆さん、私たち栃木県立さくら清修高等学校の教職員一同、皆さんの入学を心より歓迎し、祝福いたします。本当におめでとう。
 春の息吹を感じるこの佳き日に、PTA会長 高野朋久 様のご臨席を賜り、そして保護者の皆様のご列席のもと入学式を挙行できますこと、誠に嬉しく存じます。ありがとうございます。
 本校は、氏家高等学校と喜連川高等学校の長い歴史と伝統を受け継ぎ、各自の興味や関心、進路に応じて幅広く選択できる科目と主体的な学習が特徴である総合学科の高等学校として、平成十八年に開校しました。「自主自立」「進取創造」「敬愛協働」の校訓を掲げ、学業のみならず、多くの生徒が部活動やボランティア活動などに熱心に取り組んでおる躍動感あふれる学校として知られています。
 さて、新入生の皆さんは大きな期待と少しばかりの不安を胸に、今まさに高校生活を開始しました。先輩方が残した確かな実績と地域の支え、先生方の指導の下、この3年間で飛躍的に成長することを期待しながら、次の二つのことをお願いします。
 まず一つ目は、「自他ともに大切にする」ということです。人は一人では生きられない。意識するしないにかかわらず、誰もが誰かに支えられ社会は成り立っています。常に感謝の気持ちを忘れず、自尊心や尊敬の念を抱ける人物になってください。コミュニケーション能力を高め、多くの友をつくりながら切磋琢磨することにより達成できると考えます。学級活動、生徒会活動、部活動や学校行事に一生懸命に取り組むよう、お願いします。
 二つめは、「感性を磨き、正しい価値観を身に付ける」ということです。国際化、情報化、温暖化、少子高齢化などのことばが行き交い、急激に押し寄せる変化の波に戸惑いや不安を感じている人が多い時代です。皆さんは、三年間の中学校生活、新型コロナウイルス感染症の影響をまるごと受けた人たちですが、同時に、学校休業や部分登校の実施、授業形態や学校行事の変更などの幾多の変化に対応し、困難を乗り切ってきた逞しい人たちでもあります。デジタル・トランス・フォーメーション、いわゆるDXの推進が学校教育にも求められていますが、進んで新たなものを吸収し、正確な分析力をもって、自らと社会に必要な情報の獲得と価値の創造に努めてください。そのためには、基礎学力はもとより、読解力や対話力、科学的な思考力が必要です。探求心と向上心をもって、日々の授業や家庭学習に臨んでください。学問は誰もが身に付けられる財産です。頑張ってください。
 ここで、幕末の思想家、教育者であった吉田松陰の言葉を紹介します。彼は明治維新で活躍した高杉晋作、伊藤博文らを育てた松下村塾の講師として知られていますが、「夢なきものに理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし」という有名な言葉を残しています。大きな夢を抱き、高校生活を謳歌してください。そしていくつもの成功という花を咲かせることを期待します。
 結びに保護者の皆様、本日、お子様の姿をご覧になり、皆様のお慶びもさぞかしであろうと、心からお祝い申し上げます。本校の教育方針をご理解いただき、お子様の成長をともに連携を図りながらご支援くださるようお願い申し上げ、式辞といたします。
  令和5年4月7日
   栃木県立さくら清修高等学校  校長 熊田 孝幸