進路指導室より

2024年6月の記事一覧

意思決定支援について

6月27日(木)

 

 福祉関係機関の方とお話させていただく中で、表題の「意思決定支援」が話題に挙がることがあります。これは厚労省のHPにもあるように「成年後見制度」の枠組みの中で触れられることが多いようです。

 「意思決定支援」とは、「意思決定に困難を抱える人が、日常生活や社会生活等に関して自分自身がしたい(と思う)意思が反映された生活を送ることが可能となるように、その人を支援することやその仕組み」(第二東京弁護士会HP)のことです。こうしてみると、進路指導はまさに「意思決定支援」を行いながら進めていくものであると言えます。

 さて、先日保護者の方と懇談した際に、「うまく自分の考えを表出できない我が子に代わって、自分が進路先を決めてしまって良いのか」というお話がありました。なるほど、と思いながら「意思決定支援」が頭の中に浮かびました。

 「意思決定支援」を行う際に留意することとして、厚労省HPには以下のようにあります。

 ❶(本人が)黙っているのは分からないから?考えることができないから?

 ❷それは(本人の)本当の思い?伝えたいことが他にあるのでは?

 ❸(本人に真実を)すべて伝える?それをあなた一人が決めてしまってよい?

 ❹本人に代わって決めてよい?できることはもうない?

 

 自分の気持ちを言葉で表現することが難しい場合でも、実習中の態度や表情、自宅での過ごし方等、いろいろなところに非言語の意思表示が出ていることはあります。上記4項目を参考に、学校と御家庭で本人のちょっとしたサインを見逃さないよう、協力しながら進路指導を行っていきたいと考えています。

 ただ、選択における「ベスト」は、その時点では誰にも分からないものだということも事実です。私自身にも言い聞かせていますが、「後悔するのも人生」というくらいの、おおらかな心持ちでいられたらよいですね。

障害福祉事業所の「不正」問題

6月10日(月)

 

 障害者グループホームを運営する株式会社が、食材費の過大徴収やサービス報酬の不正請求で愛知県から行政処分を受けることとなっています。組織的な不正と判断された場合、総合支援法の規定による「連座制」が適用され、他都県のグループホームも運営できなくなる可能性があるとのことです。

 同社のグループホームは栃木県内にも8か所ほど(令和6年6月現在)あるようで、本校卒業生にも利用してる方がいます。もし一斉に営業停止となった場合、利用者の生活基盤が崩れかねないため、今後どのような処分となるか気になるところです。

 不正はもちろん許されることではないですが、こういった報道を目にするたび、そこに至るまでの構造的な問題点にも目を向ける必要があると感じます。報道によればこの会社の場合「儲け」ばかりを重視した経営体質が指摘されていた(株式会社ですから当然と言えば当然なのですが)ようなので、あまり同情する余地はないのかもしれません。しかし、他には「利用者のために」と事業者の体力を超えた支援を行っていく中で疲弊し、不正に手を染めてしまったケースもあるように思います。

 制度設計には財源が必要ですが、福祉業界の場合それが潤沢に用意されているようには思えません。コロナ禍で「エッセンシャルワーク」という用語が注目されましたが、そういった業界はむしろ資本主義社会では軽視されているようにも思えます。市場原理的に「人を助けてもお金は生まれない」からなのかもしれませんが…。