調査研究通信
令和5(2023)年度 教科指導充実に関する調査研究(高)『授業実践』地歴・理科(化学)・保健体育
研究協力委員の先生方の勤務校にて行われた「教科における探究的な学習」の授業実践を紹介します。今回は、地歴歴史科、理科、保健体育科の実践報告です。
「地理歴史科(歴史総合)」
歴史総合の「第一次世界大戦と大衆文化」について学ぶ単元の学習過程において、「第一次世界大戦の前後で、世界各国の政治や社会がどのように変化したか」について学びを深める活動を行いました。生徒たちは、当時の各国の新聞記者の視点から、変化に対して肯定的・否定的な立場に分かれて記事を作成し、異なる立場の生徒たちに記事の内容を伝えました。教科書に掲載されていない資料等も活用し、独自の考察なども記事に盛り込むなど、主体的に学んでいる様子が見られました。
「理科(化学)」
化学の「溶液と平衡」について学ぶ単元の学習過程において、「凝固点降下は何に依存するのか」という課題に取り組みました。最初に、仮説を設定し、それを検証する計画を立てて実験を行いました。入手したデータはタブレットを使ってグラフ化し、班員とともに対話しながら結果を分析しました。想定したものと違う結果となった班は、生徒自らが更に計画を修正したり実験を行ったりするなど、意欲的に取り組んでいました。
「保健体育科(体育)」
体育の「長距離走」について学ぶ単元の学習過程において、「なぜ、あなたは走るのか」をテーマとして探究しました。走ることで得られる「副次的効果」について仮説を立て、グループで検証・分析を行い、長距離走を継続して楽しむための目的を提案しました。仮説を検証するために、走り方や条件を工夫しながら持久走に取り組み、科学的根拠となるデータを集め、そこから得られた結論をまとめました。今回の発表では質疑応答が活発に行われ、発表者も聞いている生徒も「なぜ、走るのか」という問いについて思考を深めていました。
どの授業でも、「問い」に対して、思考力・判断力・表現力を発揮し、グループの仲間と協力しながら情報を収集・分析し、結論を導こうとする生徒の姿が見られました。また、調べたことや考えたことから、さらに「なぜ?」と問いを深め、質問をしたり議論したりする生徒も多く、探究的な学習が実現された授業となっていました。
学びに取り組む生徒の真剣な表情や、対話を重ね、協働する中で生まれる笑顔があふれる教室で、授業を担当している先生方が輝いて見えました。
令和5(2023)年度 教科指導充実に関する調査研究(高)『授業実践』 理科(物理)・工業
研究協力委員の先生方の勤務校にて、「教科における探究的な学習」の授業実践を取材させていただきました。今回は、理科(物理)、工業の実践報告です。
「理科(物理)」
物理の 単振動について学ぶ単元の学習過程において、振り子の周期に関する実験を行いました。まず生徒たちは、振り子の周期がどのような要因によって変わるのかを考え、それを確かめるための実験方法を考えました。そして、実験後、得られた結果から何が言えるのかを、エクセルで作成したグラフを分析して考察しました。考察の場面では、生徒たちは活発に議論し、学びを深めることができました。
「工業」
工業情報処理の「アルゴリズムとプログラミング」について学ぶ単元の学習過程において、「歩行者用信号機をプログラミングする」という課題に取り組みました。まずは個人でタブレットを使って「プログラミング → シミュレーション」を行い、その後グループで意見を交換しながら、「考察→プログラミングの修正→シミュレーション」の流れを繰り返し、課題解決を目指していました。
どちらの実践も、ICTを活用しながら課題の解決のために活発に議論をして思考を深め、協働しながら学びを進めていく姿が印象的でした。生徒の皆さんと研究協力員の先生方の真剣な表情と時折見られる笑顔から、充実した授業実践となっていました。
令和5(2023)年度 教科指導充実に関する調査研究(小・中) 授業実践
これまで検討してきた学習指導案に基づき、研究協力員の先生方の授業実践が始まっています。
今回は中学校の技術・家庭科(技術分野)の取組をご紹介します。
本時は「材料と加工の技術」を題材として取り上げ、制作した木工作品を互いに鑑賞して評価することを通して「ものづくり」に対する考えを深める授業です。
自分の作品のよさや施した工夫をスライドにまとめタブレットに表示したものが、電子広告として作品の横に置かれていました。電子広告により、それぞれの作品に込められた機能や工夫がより伝わりやすくなっていました。
作品の鑑賞後、生徒はアプリのアンケート機能を利用して、互いの作品を評価しました。その後は、製品の価値を高める工夫について、機能性や安全性、外観や表面処理、形状などの視点から意見を交流し、それぞれの考えを深めることができました。
他の教科でも、ICTを効果的に活用した授業が実践されています。次回の通信でも紹介しますので、お楽しみに!
令和5(2023)年度 教科指導充実に関する調査研究(高)『ルーブリック講座』
8月30日(水)に総合教育センターにて、標記の調査研究を進める上での学習会として、研究委員と研究協力委員の先生方を対象に、ルーブリック講座をオンラインで開催しました。
今回も、早稲田大学教職大学院の田中博之教授を講師にお迎えし、ルーブリックについてご講話をいただきました。「適切な評価とは何か」という理論や、ルーブリック評価活用の実践例、作成のポイントなどの具体的なお話を伺いました。「探究的」に学ぶには、生徒も教員も「見通し」を持つことが大切であり、そのためにも、目指すゴールを具体的に示す「ルーブリック」は有効であることを再認識することができました。
講座の後半は、研究協力委員の先生方が作成した「探究授業ワークシート」や「ルーブリック」を見ながら、具体的な改善策や、ルーブリックづくりのアイディアなどを田中教授からご助言いただき、学びの多い研修となりました。
今後は、各教科で「探究的な学び」を取り入れた授業を実践していきます。「ルーブリック」を活用して、生徒が自己調整しながら学びを深める様子が見られるのではないでしょうか。
令和5年度(2023)年度 教科指導充実に関する調査研究(小・中)
今年度の「小・中学校における教科指導充実に関する調査研究」のテーマは「資質・能力の育成を図る授業改善の推進~ICTの活用を通して~」です。昨年度からの継続研究となり、音楽科、図画工作科、美術科、体育科、保健体育科、家庭科、技術・家庭科の各教科で調査研究を行い、授業実践例をまとめた資料を作成します。
6月20日(火)には、学習会及び第1回調査研究委員会を実施しました。学習会では、玉川大学大学院教育学研究科教授の久保田善彦先生をお迎えし、「各教科の資質・能力の育成に資するICTの活用について」のご講話をいただきました。授業改善に必要なマインド、授業デザイン力、ICT活用のイメージ等について詳しくお話を伺うことができました。 「ICTの活用は、ねらいが明確であれば単純な機能でも効果的である」「あくまでもICTの活用は手段であって目的ではない」という言葉など、ICT活用に関する留意点を再認識できました。講話をふまえ、午後の調査研究委員会では研究協力委員の先生方とセンター指導主事が、今後の授業実践の方向性や単元計画等作成上の留意点などについて話合いをしました。
7月21日(金)には、第2回調査研究委員会を実施しました。1日かけて、研究協力委員の先生方とセンター指導主事が協働し、ICTを活用した授業について構想したり、指導案の検討を行ったりしました。各教科において柔軟な授業アイディアが生まれるなど充実した協議が続きました。夏休み明けにはいよいよ各学校で、指導案に基づいた授業実践が始まる予定です。引き続き研究協力委員の先生方と、子どもたちの対話を深め、協働的な学びを促進する授業づくりについて調査研究を進めていきます。