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学校行事や授業風景、四季の移ろいなどを紹介します
国際理解だより 15
EUについてそろそろまとめていきたいと思います。
最後に、誰のためのEUなのか考えてみましょう。EUの支柱になっている「ローマ条約」(1957年調印)の前文には、「ヨーロッパの人々の間の緊密なる連合を構築すること」と書かれています。つまり、EUは、国家のためではなく市民のためにあるといえます。
「リスボン条約」に至るまでには、さまざまな条約改正が行なわれてきました。そして、その過程で問われてきたことは、市民のためのヨーロッパ、市民により近いヨーロッパをどう構築するかということでした。「リスボン条約」でも残されたのは「市民の発議権」でした。EUでは、欧州議会への請願権などさまざまな形で市民の権利を保護するような施策が導入されています。また、年に2回、定期的に「ユーロ・バロメーター」という世論調査も実施され市民の声が反映されるようになっています。
つづく
白布ヶ丘だより2月号
国際理解だより 14
EUの統合が加速する一方で、国家の主権とアイデンティティーを危惧する国も出てきました。例えば、「欧州憲法条約」は、2005年にフランスとオランダの国民投票で否決されました。その後、その条約から超国家的な性格を排除した「改革条約」と位置付ける新たな基本条約ができました。それは2007年に調印された「リスボン条約」です(2009年12月1日発効)。この主な変更点はEUの旗、歌(ベートーベンの『第九』にある「歓喜の歌」)が削除されたことです。また、連邦を想像させるような文言も削除されました。
このことから分るように、EUは、あくまでも「国家」が主権を持っているような外見に努めようとしています。また、アイデンティティーを守るという点では、現在、EUは通訳翻訳に膨大な予算をかけてまで全加盟国の言語を公用語とし、多言語を守り通していることが挙げられます。
つづく
治癒証明書の提出について
国際理解だより 13
ヨーロッパの統合がどれだけ進展しても、国家がなくなることはないと考えます。結局、ある特定の問題を解決するためには、どのレベルの政治体で扱うのが最適なのかというところに行きつくと考えるからです。つまり、一国家の中央政府がやるべきことなのか、あるいは地方自治体レベルでやるべきことなのか、あるいはEUでやるべきことなのかといった選択の問題になっていくのではないでしょうか。このような重層的な統治の仕組みがEUなのです。
しかしながら、ただEUという仕組みをつくっただけでは何事も機能しないし、存続もできません。EUの機能を最大限に発揮するためには、加盟国がEUに対して独自のアイデンティティーを持っている必要があります。
つづく