栃高博物館

歴史ある栃木高校に眠るお宝の標本たちを紹介します

栃高博物館 81 イセエビ

                           栃高博物館 81 イセエビ

    分類 甲殻亜門 エビ綱 エビ目(十脚目) イセエビ科
    学名 Panulirus japonicus 
    英名 Japanese spiny lobster
    大きさ 通常20~30cm まれに30cm 標本は20cm
    分布 房総半島以南、熱帯の海

  語源は伊勢エビ、磯エビ、威勢エビからきているという説があります。色は暗赤色で、
 標本は色が抜けてしまいました。 繁殖期や台風の前には列を作って大移動します。
 雌は受精卵を腹部に大量に付着させて守ります。孵化の瞬間は雪が降るようです。
 イセエビの赤ちゃんはフィロソーマ幼生といいます。別名、葉状幼生といわれるとおり、
 薄い透明な体に長い遊泳脚が付いていて、親を想像できません。熱帯のサンゴ礁には
 ゴシキ(五色)エビやニシキ(錦)エビという名の美しいイセエビの仲間がいます。

栃高博物館 80 シャコ

               栃高博物館 80 シャコ(蝦蛄)

   分類 甲殻亜門 口脚目 シャコ科
   学名 Oratosquilla oratoria
   英名 mantis shrimp(カマキリエビ)
   大きさ 12~15cm
   分布 北海道以南
 
  エビに似ていますが、類縁関係はかなり遠いです。特に違うのはエビに特有の
ハサミ脚が無いことで、シャコにはトゲのある1対の鎌のような捕脚があります。
英名のカマキリエビはここからきています。寿司ネタですが、尾の身だけがきれいに
調理されているので、食べたことはあっても、全体の形は見たことがないでしょう。
肉食、敏捷で捕脚は最大の武器です。またきわめて特殊な複眼を持っています。 
   

栃高博物館 79 ヤドカリイソギンチャク

             栃高博物館 79 ヤドカリイソギンチャク
     ヤドカリについてです。イソギンチャクは78をご覧ください。
   分類 節足動物門 甲殻亜門 十脚目 ヤドカリ科
   学名 Paguriodea
   英名 Hermit crab
   
  このヤドカリの住まいの巻き貝は12cmあります。貝には2匹のイソギンチャクが付いています。
 ヤドカリはハサミでイソギンチャクを刺激します。するとイソギンチャクは岩から体を離します。ヤド
 カリはこれを自分の殻の上に付着させます。イソギンチャクは移動できるようになり、ヤドカリの
 食事の余りをもらえます。ヤドカリは宿敵タコの脚をイソギンチャクの毒で退散させることができ
 ます。お互いが利益を得るので、生物学では「相利共生」といいます。
  

栃高博物館 78 イソギンチャク

                  栃高博物館 78 イソギンチャク

      分類 刺胞動物門 花虫綱 六放サンゴ亜綱 イソギンチャク目
      学名 Actiniaria
      英名 Sea Anemone
      大きさ 通常は10cm以下、大きいものは口径60cm(この標本は5cm)
      分布 熱帯から寒帯まで世界中の海
 
    触手には毒があり、小動物が触手にふれると麻痺してしまいます。イソギンチャクは、餌を口に
  運んで丸呑みにします。ヒトに対してはほとんど毒はないけれど、ウンバチイソギンチャクは毒が
  強い。漢字で書くとよくわかります。「海蜂磯巾着」 そういえば、サンゴ礁の人気者カクレクマノミは
  毒を感じませんね。英語名は海のアネモネ。カラフルなイソギンチャクが目に浮かびます。
   

栃高博物館 77 ウミサボテン

            栃高博物館 77 ウミサボテン

       分類  刺胞動物門 花虫綱 ウミサボテン科
   学名 Cavernularia obesa   
   大きさ 夜になると30cm以上にまで伸びる(この標本は15cm)
   分布 石狩湾以南

     名前はサボテンですが、植物のサボテンとは全く違います。体から出ている
   とげ状のものは、とげではなく、ポリプです。ポリプがあるので、これはクラゲや
   サンゴの仲間といえます。刺激を与えると黄緑色に発光するそうです。下村先生
   のノーベル賞で有名になったオワンクラゲの発光と、仕組みは同じなのでしょうか。
       

栃高博物館 76 タコクラゲ

                   栃高博物館 76 タコクラゲ

   分類 刺胞動物門 鉢クラゲ綱 タコクラゲ属
   学名 Mastigias papua
   英名 Papuan Jeelly,Spotted Jelly, Lagoon Jelly
   大きさ 傘径10cm(この標本は3.5cm)
   分布 日本では関東以南の温暖な海域

   本校にはクラゲの標本が2本ありますが、この標本もすばらしい保存状態です。体内に褐虫藻
  が共生しているため、褐色になっています。標本では、褐虫藻が死んでしまったため白色です。
  傘の下から8本の口腕(コウワン)が出ていて、これが蛸に似ているために、この名前がつきまし
  た。パラオ諸島のジェリーフィッシュレイクは、タコクラゲの湖として有名です。
   

栃高博物館 75 カツオノカムリ

              栃高博物館 75 カツオノカムリ(鰹の冠 カツオノカンムリ)
  
    分類 刺胞動物門 ヒドロ虫綱 ギンカクラゲ科 カツオノカンムリ属
    学名 Velella velella
    英名 by-the-wind sailer, purple sail
    大きさ  
    分布 暖海性 外洋性
    
   クラゲの仲間です。左写真のラベルに「カツヲノカムリ」「腔」の字がかろうじて読めます。
  標本は2体入っているので、少々見づらい。右の写真中央に三角形の頂点があり、一番下側
 (三角形の底辺)に短い触手がたくさん生えています。これが1個体です。日本名は鰹がかぶったら
  似合うかもしれない帽子(冠)で、英名はヨットの帆(sail)です。この三角形の帆には気体が入って
  いて、本当の帆のように水面に突き出して風を受けます。また三角の帆の周囲は、生きているとき
  は濃い青色で、美しいです。(purple sail) 
   クラゲの標本はその柔らかさのため、形が壊れてしまいがちですが、この標本は、すばらしい
  保存状態です。残念ながら色は消えました。
    

栃高博物館 74 マンネンタケ

                 栃高博物館 74 マンネンタケ(万年茸)

    分類 担子菌門 マンネンタケ科 マンネンタケ属
    学名 Ganoderma lucidum
    英名 Lingzhi mushroom 中国名 霊芝
    分布 アジア
    
      リグニンやセルロースが多いのでとても固く、まるで「木」そのものです。ニスをかけたような
    光沢があり、美しい。普通のキノコならば時間とともにやわらかくなり、しまいには溶けてしまう
    のに、このキノコは一体どうしたのでしょうか。素直に驚きます。これならば千年でも万年でも
    存在し続けることができますね。
     霊芝(レイシ)は漢方薬として有名です。有用なキノコなので栽培もおこなわれています。
   

栃高博物館 73 ダチョウの卵

        栃高博物館 73 ダチョウの卵

   分類 鳥綱 ダチョウ目 ダチョウ科 ダチョウ属
   学名 Struthio camelus
   英名 Ostrich(学名Struthioが名前の由来です)
   大きさ オスの成鳥は230cm、135kgにもなる
   分布 アフリカ一帯の乾燥地
 
  ダチョウはエチオピア区(生物地理区)の固有種で、かつてはアフリカ全域およびアラビア
 半島にまで生息していました。大形の飛べない鳥として、知らない人はいないでしょう。オス
 が巣を作り、複数のメスが卵を産みます。卵の世話、そして雛の世話はオスの仕事です。
 卵は生きている生物としては世界最大で、鶏卵の20個分あるそうです。標本は、縦約15cm
 です。しかしその上をいく生物が、かつて生息していました。マダガスカルで発見された
 エピオルニスという鳥の卵の化石です。大きさは何と30cmもあります。
  写真下、転がり防止の白いものはヨツアナカシパンです。
  

栃高博物館 72 ダイオウサソリ

                  栃高博物館 72 ダイオウサソリ(大王蠍)

     分類 節足動物門 クモ綱 サソリ目
     学名 Pandinus imperator
     英名 Emperor scorpion
     大きさ 体長20cm 最大30cm
     分布 アフリカの中西部
  
   これだけ大きいと刺されたら確実に死ぬと思われますが、実は毒性は低く、刺されて重体に
  なったケースは、今までにないそうです。小さいサソリのほうが毒性は致死的です。(栃高博物館
  43.サソリ 文書付き)をご覧ください。大変古いタイプの生物で、クモ綱にはクモ以外に、この
  サソリと海のカブトガニがいます。昆虫ではありません。卵胎生で卵はメスのお腹の中で孵化し
  親と同じ形で生まれてきます。珍しいですね。
  

栃高博物館 71 モクズガニ

                栃高博物館 71 モクズガニ(藻屑蟹)

     分類 甲殻亜門 エビ目 カニ下目 イワガニ科 モクズガニ属 モクズガニ種
    学名 Eriocheir japonica
   英名 Japanese mitten crab
   大きさ 甲幅 7~8cm
   分布 日本各地 アジア一帯

   この標本の甲幅は約7cmあるので成長した大人のカニと思われます。また、
ハサミ脚にはたくさんの毛が生えています。まるで藻が生えているように(藻屑)。
mittenn crab(手袋ガニ)の名前もここからきています。このカニは体液の浸透圧
調節が素晴らしく発達しており、海水から淡水まで生活することができます。生物
の教科書にも載っています。高級食材の上海ガニは同じ仲間です。
  

栃高博物館 70 ナメクジウオ

         栃高博物館 70 ナメクジウオ

      分類 脊索動物門 頭索動物亜門 ナメクジウオ綱
     学名 Branchiostoma berucheri
     英名 Lancelet 
     大きさ 3~5cm
     分布 世界中の暖かい浅海、愛知県蒲郡市三河大島と広島県三原市有竜島は
         ナメクジウオの生息地として天然記念物に指定

   名前がどうも、という人がいると思います。たしかに色合いと大きさがぴったりですが。
  しかしこの生物、大変な秘密があるのです。魚類、両生類、は虫類、鳥類、ほ乳類は
  「脊椎動物」ですが、その直接の祖先がナメクジウオなのです。化石はカンブリア紀の
  バージェス動物群(カナダ)の一つとして発見された「ピカイア」です。(5億1500万年前)
  顎が無く、海水を吸い込んで鰓で濾過して食べます。
   

栃高博物館 69 ネコザメの卵嚢

          栃高博物館 69 ネコザメの卵嚢

    分類 軟骨魚綱 ネコザメ目 ネコザメ
    学名 Heterodontus japonicus
    英名 Japanese bullhead shark
    大きさ 最大120cm
    分布 太平洋北西部 日本では北海道以南
   
 ネコザメは水族館の人気者です。茶色っぽい体色に黒い横帯が入ります。横といってもこれは 頭を上
にした縦横で(生物の縦横は常に頭が上です)、魚は横になった状態なので、縦帯に見えます。目の上
に皮膚の隆起があり、日本ではこれを猫の耳に、英名では牛の角に見立てて、名前がついています。
 ネコザメの卵嚢は螺旋状のひだが特徴です。これで岩の隙間などに固定されます。約1年かけて成長
し、生まれるとすでに、18cmぐらいあります。
  

栃高博物館 68 ヨツアナカシパン 

                     栃高博物館 68 ヨツアナカシパン 

    分類 ウニ綱 タコノマクラ目 ヨツアナカシパン科
    学名 Peronella japonica
    英名 Seabiscuit,Sand doller
    大きさ この標本は約4cm
    分布 世界中

   「菓子パン」です。英名はシービスケット(海のビスケット、菓子パンと同じ発想)、サンドダラー
  (荒野の1ドル銀貨ならぬ砂の中の1ドル硬貨)。浅海の砂底にいる薄っぺらなウニで非常に短い
  棘があります。これは死んで砂浜に打ち上げられたもので、よく見かけます。向こうが見えるような
  大きな穴が開いていればスカシカシパンで、これは中央に小さな穴(生殖孔-卵や精子の出口)
  が4つあるのでヨツアナカシパンといいます。表面にはヒトデ模様があります。ウニもヒトデも同じ
  仲間で、共通項は「五放射相称」です。
   

栃高博物館 67 ゴンズイ  

          栃高博物館 67 ゴンズイ

         分類  硬骨魚綱ナマズ目
    学名  Plotosus japonicus
         英名なし
         大きさ10cm~20cm
         分布日本沿岸 
       
       (japonicus)なので英名なしです。ヒゲはナマズ目の特徴です。本数も多く立派ですね。
   「ゴンズイ玉」といって集団で行動する習性があり、私も館山の海で見たことがあります。
   この集団形成にはフェロモンが関わっているそうです。ひれに毒があるので、触るときに
   注意か、それより触らないことです。
    

栃高博物館 66 イカとタコ

          栃高博物館 66 イカとタコ

     分類 軟体動物門 頭足綱 イカは十腕形上目 タコは八腕形上目
     英名 イカ squid、Cuttlefish(甲イカ)
         タコ Octopus(8本足という意味)、devilfish(悪魔の魚)

 イカ(左)とタコ(右)を並べて撮影してみました。同じ頭足綱に属します。本当は頭足ではなく体と足
です。足の付け根に漏斗(ロート)という出水管があり、ジェット水流を足先方向に噴出し体前方に泳ぎ
ます。この写真では下向きですね。漏斗の両側にはすばらしく進化した眼があります。細長いイカの体
には透明でペラペラの骨(エンペラ)があり、丸い体のタコにはありません。私たちの食生活を豊かにし
てくれますが、日本以外ではあまり食べないようです。デビルフィシュですからね。タコは飼育しやすい
ですが、イカは難しい。水族館でイカ見たことありますか。タコの体にイカのようなひれがついていたら
それはタコではなく、イカなのでしょうか。変な質問ですが答えは「タコ」です。深海には通称「ダンボ」
というタコがいて、丸い体についたひれで優雅に泳ぎます。イカタコ話でした。
   

栃高博物館 65 サメの歯とアンモナイト

            栃高博物館 65 サメの歯とアンモナイト
    
       サメの歯 (軟骨魚綱 Shark teeth) 軟骨魚なので、骨はほとんど化石になりませんが、歯は
  硬く化石になります。またサメの歯は数が多く、生え替わるので、たくさん発見されています。サメは
  4億年前の古生代に現れ、現在も繁栄しています。この標本の歯を側面に沿ってはかると3.5cm
  ありますが、世界最大のサメの歯の化石は18cmあります。歯の大きさから推定すると、大きさ20m
  以上、体重25t以上だそうです。名を「メガロドン」といいます。
   アンモナイト (軟体動物門 頭足綱 Ammonite) 古生代シルル紀から中生代白亜紀末まで
  およそ3億5000万年繁栄した生物です。(三葉虫より長いがサメより短い!)今も生きているのが
  オウムガイです。三葉虫と同様に示準化石となっています。この標本は2cmですが、最大は直径
  2mです。不思議なことに恐竜とともに絶滅しています。
  

栃高博物館 64 三葉虫

                     栃高博物館 64 三葉虫

            分類 節足動物門 三葉虫綱
     学名 Trilobita
     英名 Trilobite
    
   古生代の示準化石です。古生代の初期(カンブリア紀)に現れ、大繁栄し古生代の終期(ペルム紀)
  に絶滅しました。5億年から2.5億年前まで、2億5000万年の長きにわたり生存した生物です。これ
  は恐竜よりも長いのです。ヒトは猿人まで遡ってもたかだか400万年です。 
   美しい棘のある化石は美術品のように高価なものもあります。この標本は、奥が8cmで手前が4.5
  cmです。特に手前の標本は「三葉」、「Tri-(3という意味)」がよくわかります。大きなものでは40cm
  以上もあるそうです。       
   

栃高博物館 63 モモイロサンゴ・アカサンゴ

           栃高博物館 63 モモイロサンゴ・アカサンゴ

    分類 刺胞動物門 花虫綱 
    学名 Corallium elatius(モモイロサンゴの学名、ラベルにも書いてある)
    英名 Coral

  上がモモイロサンゴで(土佐産)の文字が見えます。下はアカサンゴで箱の名札は消えていました。
 しかしこんな文字が読み取れました。「動物標本社製造」 東京市神田區五軒町一番地。東京市は
 1889年(明治22年)から1943年(昭和18年)までの間に存在していました。その後はもちろん
 東京都です。
   この2つのサンゴは、宝石サンゴと呼ばれています。高知沖の深海で採取されるものは、特に
 美しく、世界的に有名で、高値で取引されています。赤(紅)サンゴは「血赤」と呼ばれ、品質がよく
 海外へ大量に輸出されました。この標本も、もしかすると本物のお宝かもしれません。
   
   
    

栃高博物館 62 ホウズキガイ

                  栃高博物館 62 ホウズキガイ(チョウチンガイ)

    分類 腕足動物門 
    学名 Brachiopoda
    英名 lamp shell
    大きさ 標本の殻の横径は約2cm
    
   右の写真を見ると二枚貝のように見えますが、左の写真は殻を外して中が見えるようになって
 います。触手の一部が残っていて、二枚貝にある軟体部はありません。貝柱もありません。実は
 この生き物、古生代の示準化石になっていて、名前をスピリファーといいます。軟体動物ではなく
 腕足動物という全く違うグループに属します。九州の有明海には同じ仲間のシャミセンガイが豊富
 にいて食用になっています。ただし貝の中身は硬くて食べられず、この標本では脱落してありませ
 んが、殻から出ている筋肉質の肉茎を食べます。
  ラベルには「ホウヅキガイ」そして「栃」が消えた「木中學校」が確認できます。