校長室便り

2021年6月の記事一覧

【高2】領域別探究学習(まちづくり・教育)特別講話

6月4日(金)14:50~15:50(7限目+清掃の時間)、高校2年生の領域別探究学習の一環として、「まちづくり・教育」領域の特別講師として、宇都宮大学地域デザイン科学部コミュニティデザイン学科4年生の佐藤綾香さん、そして、指導教官である石井大一朗准教授をお招きし、お話をお聞きしました。

英語演習室には、30名以上の希望者が集まり、かなりの熱気を感じました。

本日の講師の佐藤さんは、お隣の茨城県のご出身でAO入試で宇都宮大学に入学されたそうです。しかし、特段変わった経歴があるというわけではなく、ごく普通の学生として入学されました。
そして、文科省の「トビタテ留学Japan」に採用され、2020年の3月から12月まで台湾で留学しました。そのころ、日本では臨時休校が始まった頃でしたが、ぎりぎりのタイミングで台湾に渡ることが出来たそうです。


今回、佐藤さんが伝えたいことは、
1.日本と台湾の発想の違い
2.国際比較をすることのおもしろさ
でした。

台湾留学で学んだことを
「海外を知って常識を越える」~まちづくりの視点から~
というタイトルで、お話してくださいました。



まず、「なぜ、留学への挑戦を決意したのか」について話してくれました。
佐藤さんは、大学2,3年次に大学での授業の学びから、宇都宮の「コミュニティFM宮ラジ」で、地域のセーフティネットを発信し、子どもの貧困問題に関心が高まったそうです。子ども食堂や学習支援の機能を持つ団体は増えているが、それだけでは不十分なのでは? と考えるようになり、海外での事情を知るため、留学への挑戦を決意したそうです。
また、台湾は1999年の台湾大地震を機に、ボランティア活動が活発化し、2000年から住民主体のまちづくりが加速しました。2019年には、台湾版地方創生が開始され、地域独自の文化・歴史をベースとしたまちづくりを開始しました。
このように、「まちづくり」について学ぶなら、台湾が「ホット・スポット」だったのかもしれません。

ここまでで、今日の参加者全員でペアワークを行いました。「自分の中での留学に対するイメージ」について5分間、シェアし合いました。


続いて本題です。佐藤さんが台湾で体験した「まちづくりに関わる事例」を紹介していただきました。

事例1:インターン先
事例2:子どもの貧困支援を通した地域創生
事例3:街の中が劇場
事例4:原住民の村UIターン続出
事例5:生き残った建物や土地
事例6:廃線跡は平日も賑わう観光スポット

そして、そこから学んだキーワードが示されました。
事例1:子どもの貧困支援:循環/NPO・企業・SDGsとの一体性
事例2:地域創生:生きる力を身に付ける支援・人との関りを増やすこと
事例3:街の中が劇場:地域資源の新たな生かし方
事例4:原住民の村:その土地ならではの教育を追求することの有効性
事例5:アートで街を守る:守る手段はアートからの観光
事例6:廃線跡が観光地:規制が生み出す効果



日本では常識として諦めていたことが、海外では乗り越えてその先を描いていたりすることがあり、そのことで、自分の中にある常識に気づいたり、新たなものさしができたりすることが、国際比較のおもしろさである、というお話に、皆納得していました。

最後に、質問コーナーがありました。



ここで、予定の15:50になりましたので、いったん終了しました。

しかし、実はここからが本番でした。
この後、SGクラブ(佐野グローカルクラブ)のメンバー(高1も多数)が会場に加わり、大質疑応答大会となりました。宇都宮大学の石井准教授もその議論に加わり、約1時間にわたって、様々な議論が巻き起こっていたようです。

この第2部には、私は参加できなかったので、後から話を聞かせてもらいました。
非常に有意義な時間となっていたようです。第2部終了後、講師の佐藤さんと石井准教授、そして、SGクラブの部長(2年2組の山﨑紗加さん)、副部長(2年1組の岸 愛梨さん)が、校長室に立ち寄ってくださり、また、新たな議論が巻き起こりました。石井准教授は、「佐野高校の生徒は、質問や議論が好きですねえ。こういうのは他ではないですよ」と感心していました。


今日の佐藤さんのお話は、国際比較をすることで、自分の中にある常識という壁があることに気づき、それによって、常識を乗り越えていくことができるようになる、ということでした。
実は私も、佐高生が自分の言葉で話せるようになってきたのは、様々な探究学習を行うことなどを通して、自分の中の常識に気づくようになり、それを乗り越えてみようとチャレンジをする生徒が増えてきたのではないか、と考えていました。そのことを石井准教授に伝えると、その通りなんですよ。世の中を変えていくのは高校生なんですよ。と激励してくださいました。

お二人には、14時半から17時半まで、3時間も佐高生たちに付き合ってくださいました。本当にありがとうございました。