校長室便り

校長室便り

中高合同入学式

4月7日、今日は中高の合同入学式がありました。

新型コロナ感染防止のため、体育館の窓を開け放ち、出来るだけ席の距離を開け、式の時間も大幅に短縮するなど、例年とは異なる形での挙行となりましたが、生徒たちは厳粛な姿勢で式に臨みました。
その中で、式辞として、以下の内容を伝えました。私の思いが込められていますので、以下に、式辞の中心部分を抜粋して掲載します。

校庭の桜はピークは過ぎていましたが、まだきれいに咲いていました。

式辞(抜粋)
○皆さんには、本校の歴史と伝統をしっかりと受け止め、本校に入学できた喜びを忘れることなく、「佐高生」「佐附中生」としての責任と自覚を持って中学・高校生活を送って欲しいと考えています。そこで、私から皆さんに望むことを一つだけ、お話ししたいと思います。
 
○それは、「恐れずに挑戦してほしい」ということです。皆さんは、それぞれの目標や希望の実現に向けて勉学に、スポーツや文化活動に打ち込もうという意欲を持っていることと思います。しかし、現在、新型コロナウイルスの感染者は、世界全体で100万人を超えるなど、猛威を振るい続け、長期戦の様相を呈しています。私たちの周りでも、東京オリンピック、パラリンピックの延期を始め、外出の自粛、海外研修の中止、様々な部活動の大会の中止、など、自由にやりたいことができない、といった閉塞感に包まれています。もちろん、最優先すべきは人の命ですが、こうした状況が長く続くことによって、皆さんの頭や心、体が、内向きな気持ちに染まってしまうことを私は危惧しています。感染が収束するまではじっと我慢して待つしかない、という諦めに似た思いもありますが、皆さんの頭や心、体の成長は、待ってはくれません。たとえ、勉学やスポーツ、文化活動が、思うようにできないことがあったとしても、それぞれの目標や希望の実現に向けて、恐れずに挑戦し、自分の人生を自分で切り拓くことを怠ってはいけないのです。

 グローバル化は、感染症の急激な拡大に伴う難しい課題をあらためて世界に突き付けていますが、今、必要なのは「グローバルを怖れない人材」であると私は考えています。現在の危機的な状況は、永遠に続くものではありません。必ず終わりがあり、そこには新たな世界観が生まれているはずです。本校は、そうした新たな世界への皆さんの挑戦に応えることのできる学校でありたいと思っています。

〇佐野高校は、本県唯一のSGH、スーパーグローバルハイスクールとして文部科学省の指定を受けており、SGH活動に取り組む生徒や卒業生を「SGH通信」で紹介しています。今年の2月27日発行の第42号では、中高一貫の3期生である佐藤直(さとう・なお)さんの活躍が紹介されています。彼女は現在、大阪大学外国語学科に在学しており、スワヒリ語を専攻しています。昨年度は十か月の予定でタンザニアに私費留学をしていました。タンザニアのスワヒリ語が一番きれいとされていることから、留学先としてタンザニアを選んだそうです。新型コロナの影響で今は日本に戻っていますが、その間の状況を本人に聞いてみました。新型コロナがアフリカ大陸に入ってくると、アジア人差別が激化し、物乞いの少年に「ヘイ、コロナ。コロナはどこにいるんだ?」と言われたり、バスの運転手に「コロナが乗るなら消毒液がいるだろう?」と大量の消毒液を突然、手や腕にかけられたりしたそうです。コロナ騒動によって、人間は時に差別を正当化してしまうという弱さを目の当たりにしたのです。佐藤さんは、日本に帰国する前までは、もうタンザニアとは関わらないようにしようと思っていましたが、今は不思議とタンザニアが嫌いになったわけではなく、コロナが収束したら、また戻りたい気持ちになっている自分に気づいたそうです。確かに、彼女のような生き方は誰にでもできるものではありません。しかし、グローバル社会を生きるということは、そういった人間の弱さと向かい合うことを怖れないことが、必要なのかもしれません。

〇皆さんの周りにはかけがえのない素晴らしい仲間がいます。上級生や卒業生たちもいます。それぞれ、自分を磨きたい、大きく成長したい、夢を実現させたい、と願っている仲間たちです。ぜひ、この佐野高校や附属中学校という恵まれた環境の中で、切磋琢磨し、高め合う生徒集団となって、一人で越えるには難しい壁も、みんなで乗り越えていってほしいと思います。

〇新入生入場の際に流れていたオフィシャル髭ダンディズムの「宿命」の歌詞の中で、「奇跡じゃなくていい 美しくなくていい 生きがいってやつが光り輝くから」という一節があります。私は、皆さんが卒業するまでに、そう思えるような学校生活を送れることを望んでいます。
(以下、省略)