校長室便り

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校長室(自宅)便り⑤

今日は、また本を紹介しようと思います。

郡司芽久(ぐんじ めぐ)著 「キリン解剖記」(ナツメ社、2019年8月発行)



これまでに紹介した「佐高ミュージアム」でも、ブタの眼球や脳の解剖について書いたことがありましたが、生徒は基本的に「解剖」は大好きです。「今度、解剖をやるからな」というと、最初は「えー?」と声を上げますが、内心は楽しみでワクワクしている、という生徒が多かった、という印象があります。

実は、私は佐野高校で最初に教壇に立ってから、毎年、生物の授業でニワトリの解剖を見せてきました。生物の教科書は、たいてい「細胞」の単元から始まり、細胞の集まりである「組織」(筋組織、神経組織等)、さらには「器官」(胃、小腸、脳等)、「器官系」(消化器系、循環器系等)という風に進んでいきます。器官や器官系を理解してもらうには、実物に勝るものはない、と考えていたからです。

当時、親しくさせていただいていた市内の肉屋さんを通じて、卵をあまり産まなくなった「廃鶏」を業者から譲ってもらい、授業の直前にさばいたニワトリを生物室に持ち込み、解剖を行いました。そのことは、生徒たちの印象にも残ったらしく、当時高校生だった生徒が、いまや佐高や附属中の生徒のお父さんになっていて、「あの時の解剖は覚えています。」とか「先生、解剖やってたこと覚えています」と、今年の入学式で何人かの保護者から声をかけられました。

さすがに今はできないですが、その伝統?は生徒に脈々と引き継がれています。科学部では、旭城祭の展示の中で、毎年、カメの解剖のデモンストレーションを行っています。かならず、部長が執刀する「ならわし」があり、解剖の開始を校内放送で告知すると、大勢のお客さんが集まってきます。なかには、解剖が終わった後も、そのまま残って部員を質問攻めにするお客さんも毎年何人かはいるようです。

また、科学部には、「私は解剖がやりたい」という理由で入部する生徒も何人もいました(いずれも女子です)。「解剖女子」たちはみな行動力があり、道端に動物の死体が落ちていると、ためらわずに拾ってきます。タヌキ、カラスなど、見つけると家の方に車を出してもらって、佐高まで運んできて、自分たちでてきぱきと解剖をしていました。自分で本を探して解剖の仕方や骨格標本の作り方を勉強しており、顧問の私が何かを教える、といった余地は、ほとんどありませんでした。

また、科学部では、2013年から2017年までは、カメの繁殖を研究テーマとしており、多くのカメを解剖し、卵巣の状態や体内の卵の成長の様子を詳細に計測しました。1年間で数十体以上は解剖しました。これらの研究成果は、日本学生科学賞のみならず、カメに関する学会の発表でも高く評価されました。そうした研究を支えていたのは、卓越した技術と信念を持って取り組んていた「解剖女子」の存在を抜きにしては語れません。

一般的に、「解剖が好き」というと、「あいつ、あぶないんじゃないか?」といった周囲の偏見の目もありがちですが、「解剖」は、生物の体の仕組みを理解する方法として、最も基本的な手法で、今後もその必要性や意義は不変です。研究活動や学習としての「解剖」はとても重要であると思っています。


前置きが長くなってしまいましたが、著者の郡司さんは、1989年生まれの「解剖女子」で、現在、国立科学博物館で「キリンの解剖」を仕事にしています。

郡司さんは、幼少期からキリンが好きだったそうですが、中学高校時代は部活や勉強が楽しくて、キリンに夢中といったわけではありませんでした。そして、転機は18歳の春に訪れました。2008年、大学(東京大学)に入学し、4月半ばに大学主催の「生命科学シンポジウム」に参加し、「この先生たちみたいに一生楽しめる大好きなものを仕事にしたいなあ」という思いが生まれました。そして、ふと思い出しました。「そういえば、私、動物の中でも特にキリンが好きだったなあ」 

それから、大学の数十人の先生の話を聞き、「キリンの研究ができないか」聞いて回りました。当然のことながら、日本には野生のキリンはいるはずもなく、生物学の本流は、分子生物学にあったことから、「キリンの研究ができますよ」という先生には全く出合えませんでした。

ところが、チャンスはやってきたのです。入学から半年たった2008年の秋、後期の授業で、「博物館と遺体」という名前のゼミナール(少人数のゼミ形式の授業)が開講されることになりました。担当教授は、「解剖男」を自称する遠藤秀紀先生で、受講者を決める選考用紙の最後に一言、「キリンの研究がしたいんです。」と書きました。

選考を通過した後、最初の実習の休憩時間、遠藤先生から「キリンの遺体は結構頻繁に手に入るから、解剖のチャンスは多いよ。研究できるんじゃないかな」と、さらっと答えられ、彼女のキリン研究者への道が開けてきたのでした。

この本は、全くのシロウトの「解剖女子」が、周囲の人たちを巻き込みながら、「キリン研究者」となっていくまでの頑張りを時間の流れとともに、具体的に説明してくれています。これを読むと、「ああ、こうやって研究者になっていくんだな」と納得させられます。

ところで、人間を含めて、哺乳類の首の骨の数は7個と決まっています。一方、キリンは長い首を持っているため、高い木の上の葉っぱを食べたり、地面に口をつけて水を飲んだりもします。彼女は、なぜこのような上下の首の移動(可動範囲が大きい)が可能になるかに目を付け、多くのキリンを解剖した結果、キリンは胸の骨の一つが、首の骨と同じように動かすことができる8番目の首の骨に相当し、下向きに首が折れやすくなっていることを発見したのです。

この発見を聞いて皆さんはどう思いますか?「これは大発見だ。すごいぞ!」と素直に思う人もいると思いますが、「それがわかったことが、何の役に立つの?」と感じる人もいるかもしれません。おそらく、前者はこの本を手に取り、後者はスルーしてしまうでしょう。

ところで、博物館には、「3つの無」という理念があるそうです。「3つの無」とは、無目的、無制限、無計画、です。「これは研究につかわないから」「もう収蔵する場所がないから」「今は忙しいから」 そんな人間側の都合で、博物館に収める標本を制限してはいけない、という戒めのような言葉だそうです。たとえ、今は必要がなくても、100年後、誰かが必要とするかもしれない。その人のために、標本を作り、残し続けていく。これが博物館の仕事なのだそうです。

今の世の中、「それが何に役に立つのか」が問われ続けています。「キリンの首の骨」の秘密が解明されたからといって、どこかに経済的な利益がもたらされるものではありません。役に立つかどうかと言われれば、100%役に立つことはないでしょう。

でも、研究はそれでもいいと思います。それでもいいと保証されるから、研究が世代を超えて繋がっていくのではないかと思います。研究は、役に立つからやるのではなく、好きなことだからやるんだ、という当たり前のことをこの本は教えてくれました。


さらに、関連本を紹介します。


遠藤秀紀著 「解剖男」(講談社現代新書、2006年2月発行)
遠藤秀紀著 「パンダの死体はよみがえる」(ちくま新書、2005年2月発行)

→「キリン解剖記」の著者(郡司さん)の師匠である自称「解剖男」遠藤先生の著書です。さらにコアな「解剖の世界」へあなたを誘います。

養老孟司著 「解剖学教室へようこそ」(ちくま文庫、2005年10月)

→附属中の必読図書100冊の中に入っています。中学生の各教室に置いてありますから、一度手に取ってみてください。

佐高ミュージアム⑰

「佐高ミュージアムNo.86~90」を公開します。

「虫こぶ」については、皆さんの家の庭などで見つかる可能性が高いです。ぜひ、変な「葉っぱ」がないか、探してみてください。そして、もし、見つけたら、登校した際、校長室まで持ってきてください。楽しみにしています。

佐高ミュージアムNo86 「県内カメ事情」.pdf
佐高ミュージアムNo87 「虫こぶ」.pdf
佐高ミュージアムNo88 「イノシシの逆襲」.pdf
佐高ミュージアムNo89 「イリオモテヤマネコ」.pdf
佐高ミュージアムNo90 「日本爬虫両棲類学会」.pdf

校内の大掃除をしました!

今日は、来週からの分散登校による授業開始に向けて、職員全員による校内の大掃除を行いました。教室はもとより、廊下、トイレ、昇降口など、生徒が利用する場所を約40分かけて、きれいにしました。
生徒を迎える準備は着々と進んでいます。

「幸せな学校」を作ろうプロジェクト

今日は、「幸せな学校」を作ろうプロジェクトの一環として、ベネッセコーポレーション関東支店長の蘆田章吾先生による「学校教育デザイン」講話を実施しました。

14時から15時の日程で、45分の講話と質疑応答が行われました。
3密を避けるため、校内は4会場、在宅勤務で10名、出張先から1名が、Zoomという遠隔会議システムで参加しました。講師の蘆田先生は、全国の高校教育改革の最前線について、最も熟知されている方です。


校内の会場1

講師の蘆田先生



講義終了後も活発な質疑応答が行われました。



先生方からの感想としては、
「今の本校職員にとても必要なもので大変参考になりました。」
「学校教育目標を具体的な資質・能力で示すためには、校内外の納得感という視点が必要だということがわかりました。」
など、具体的な事例をもとに、納得感の高い講義でした。

来週18日には、これを受けて、本校のプロジェクトチームの検討会が開催されます。

動画制作の現場に潜入!②

今日は、高校の先生方の授業動画の制作現場(地歴科、理科)に潜入しました。

まずは、地歴科の高久先生です。
高久先生は、パワーポイントの画面に、後から解説を録音しています。録音スタジオは、コンピュータ室です。静かなので落ち着いて録音できるそうです。



高久先生にインタビューしました。

授業動画を作成する際、心がけていることはありますか?」
→やはり、5分から10分の長さにまとめることが大切です。どうしても長いと集中力が続きませんからね。
また、国際情報研究所のHPには「データダイエット」が提唱されています。日本中の高校が、Zoomなどを利用して遠隔授業を行ったとすると、それだけで日本のデータ通信量はパンクしてしまいます。ユーチューブのデータ通信量は、Zoomを行う際のデータ通信量に比べると圧倒的に少ないですが、できるだけ容量が少なくなるよう、画質を最小限に抑えるなど、データダイエットしています。

授業動画を作成することで、新たな気づきはありますか?」
→生徒のいないこと、授業ができないことは辛いです。自分は改めて授業をすることが好きなんだなと感じています。やはり、双方向の授業の方が、生徒にとって励みになると思います。


続いて、理科の清水先生の授業動画の作成現場に潜入しました。
清水先生は、生物室で撮影しています。普段、授業をしている場所が、一番やりやすいのかもしれません。



清水先生にインタビューしました

授業動画を作成する際、心がけていることはありますか?」
→教科書や問題集で、わかりにくい所、つまずきやすい所をピックアップして、説明しています。普段の授業での説明をそのまま撮っているような感じです。

生徒は、授業動画をどのように活用しているのでしょうか?」
→生徒は、課題のプリントをやる上で、わかりにくい所を動画で確認しているようです。わりと順調に進んでいる生徒が多いようです。

*それぞれ、普段の授業を意識して、動画を作成している、という印象を受けました。動画作成者の先生が、この動画で何を一番伝えたいんだろう、という視点で、動画を見てみると、より興味がわくかもしれないですね。

授業動画の制作現場に潜入!

今日は、先生方が配信している授業動画の制作現場に潜入しました。今回は中学校編(特に、数学と英語)です。

まずは、これまで多くの動画を配信している数学科の服部先生の動画制作の様子をのぞいて見ました。



服部先生は、自分のHR教室で撮影しています。
黒板と服部先生が両方写るように、カメラ位置のチェックから始めます。



服部先生にインタビューしました。

どんなことに心がけて動画を作っていますか?」
→まずは、生徒が興味を引くような内容にすることです。世の中には数多くの授業動画があるので、それを見て参考にしています。ただし、それらの動画との大きな違いは、自分がよく知っている先生が授業をしていることで、まずそこから興味を持ってもらおうと、工夫しています。

普段の授業と比べて大変なことはありますか?」
→授業の準備は普段以上に必要になります。どうしたらわかりやすい板書になるか、いかに5分程度にまとめるか、などについて、検討しています。

続いて、英語科の富永先生です。富永先生は、パワーポイントの画像に、後から音声を入れています。放送室を録音スタジオとして使用しています。



富永先生にインタビューしました。

どんなことに心がけて動画を作っていますか?」
→ゆっくり、はっきり、ていねいに話すことを心がけています。また、発音など、生徒が繰り返して発声できるような内容にしています。

授業動画をつくることで、新たな気づきのようなものはありますか?」
→自分が作った動画を自分で見ると、話すペースが速いなと思いました。子供たちにとって、どんな話し方がいいのか、など、生徒の立場から自分の授業を見直すきっかけになりました。ゆっくりと大きな声で、何が大切なのかを伝えていきたいです。
また、ネット上で見ることができるユーチューブの動画を見ることで、自分の作る動画自体も改善していると思います。

最後に、数学科の山田先生です。山田先生も、パワーポイントの画面に、解説を後から録音しています。放送室は、いろいろな先生方にとって、スタジオとなっています。


山田先生にインタビューしました。

どんなことに心がけて動画を作っていますか?」
→教科書の中で、特にわかりにくい所などをピックアップして説明しています。
教科書を理解する「きっかけづくり」になればと考えています。

授業動画には、どんなメリットがあると思いますか?」
→自分が作った動画を自分で見ると、話すスピードが速いことがわかりました。授業動画を作ることが、自分の授業改善につながっていると思います。また、生徒にとっては、遠隔授業と違って、わからないところを繰り返し見ることができることが、メリットなのではないかと思います。」

*以上、中学校の数学と英語の授業動画の作成現場からお伝えしました。
先生方は、授業動画の制作に、けっこうはまっているように見えました。
今回紹介した先生方は、いずれも「生徒が授業動画を見た感想が知りたい。反応がないのが、一番つらい」と話していました。

授業が再開できる日が待ち遠しいですね

下野新聞の1面に掲載!

昨日行われた下野新聞の本校への取材の様子が、本日の下野新聞1面で紹介されています。今回は社会部の取材ということで、より重要な位置づけとなり、1面掲載となりました。以下に、掲載紙面を紹介します。



(下野新聞5月12日付け、1面より。下野新聞社より著作物利用許諾済)

下野新聞の取材がありました!

今日から、分散登校の第一段階が始まりました。
本校では、中高の各学年とも希望面談を実施しています(高3については、学年で対応しています。)

分散登校初日ということで、本日朝、下野新聞の社会部から取材の依頼があり、10時から11時30分までの1時間半、取材を受けました。

ちょうど、その時間帯に面談にきていた3人の生徒(保護者)を取材していました。
一人目は、3年4組の門脇さんで、面談終了後、校長室まで取材を受けに立ち寄ってくれました。


「久しぶりに先生と話ができて楽しかった。学校が始まらないのは不安だが、学校の先生とは学年スペースのメール等を活用して、家庭での学習を進め、受験に臨みたい。」とインタビューに答えていました。動画でも撮影していましたので、下野新聞の動画ニュースでも紹介されるかもしれません。

二人目は、3年3組の田尻さんで、お母さんと面談を受けていました。


「受験生なので、学校がないのは不安だった。学校がないとだらだらしてしまっていた。面談をしてくれて助かった。自分ではわからないところを知ることができて良かった。これから、頑張っていきたい。」と話してくれました。

また、3年4組の福地さんも面談の様子を取材されていました。


生徒たちにとって、今回の面談はこれまでの過ごし方を振り返ったり、これからどうしたらいいのか、について考える良い機会になっていたようです。

なお、本日の取材は、明日の下野新聞の社会面と下野新聞のHPの動画ニュースで紹介される予定です。