食品化学科日誌

化学を利用した食品加工

今日は、食品加工化学を合わせた内容の実習を行いました。

 

テーマは「ミカンのシラップ漬け」みなさんも馴染み深いのでは??

 

スーパーやコンビニ、100円ショップでも購入できる程、身近な缶詰で価格もお手頃。それでいて筋の1つも残さず綺麗に剥かれている。すごいですよね♪


この薄い皮のことをじょうのう膜と言います。手でむいたことのある人なら、どれほどむきにくいかわかりますよね。 

でも、「どうやってこんなに綺麗にむいているんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?

 

きっと日本の製品なら一つひとつ人の手で…

 

…なんて考えていませんか?

 

もちろんその方法でも可能です。

 

ただ、手作業でおこなうということは、その作業をする人にお給料(人件費)が発生します。

 

今の日本で、しかも手作業でミカンの缶詰をつくったりしたら、1缶1000円超え…なんて商品になってしまいます。

 

ではどうやって綺麗にむいているのか?

 

答えは今回の実習でも使用した「塩酸水酸化ナトリウム」という薬品を使いう酸-アルカリ併用法と言う方法です。酸には塩酸を、アルカリには水酸化ナトリウムを使います。

 

薬品と言っても、理科や化学の授業で使う実験用の塩酸や水酸化ナトリウムではなく、食品衛生法で定められている指定添加物としての塩酸と水酸化ナトリウムを利用します

 

実際にミカンのじょうのう膜を除去していきましょう♪

 

これからの作業は必ず酸、アルカリに腐食されない道具を使います。

絶対に金属製の鍋やボウルは使わないでください。

 

まずはミカンの外皮をむき、房を分け0.6%塩酸を30℃に加温して20分作用させます。時々優しく混ぜます。

すると


これが酸処理前

 


これが酸処理後

 
少しふやけた状態になります。


じょうのう膜は「ペクチン質」や「繊維質」からできていて、水に不溶なものが多く含まれています。そこへ塩酸を作用させることで加水分解され、水に溶けられる状態に変化します。

酸処理中はだんだんと溶けたじょうのう膜が液の中に浮いてきたのがこの状態です。

 

酸処理しただけでも十分綺麗なのですが、一度水洗いし、次は0.3%水酸化ナトリウム水溶液で30℃15分処理します。

 

アルカリ処理前

 

アルカリ処理後

 

この処理によって、アルカリに溶ける繊維質のセルロースが除かれて、ミカンの房が綺麗になりました。

 

この後、流水中で1時間程水洗いをして、ミカンに付着した水酸化ナトリウムを洗い流して見たことのある缶詰のミカンができあがりです。


最後に56%の糖液(シラップ)につけ込んで2週間ほどつけ込みます。

実は、ミカンに限らず果物のシラップ漬けはできたては美味しくないのです。

漬け込み始めは糖度にばらつきがありますが、時間が経つにつれ味がなじんでくる(糖度平衡)ため、少し置いた方がおいしく仕上がります。